アスカからの指令で、成瀬は鬼を始めるために配られたカメラを頭につけた。
成瀬が鬼の時は、私たちは参加できない……、
いや参加しなくていいので端に寄った。
見渡せば、私たちと同じ2年生が端に寄っている。
立ち位置についた3年の先輩の言葉を聞いて私は、制服のスカートの裾を握りしめた。
手に力が入っていた。
ただの『緊張』なのだけれど。
聞こえるように叫んだ成瀬の声は、しっかりと聞こえたらしく、3年のリーダーの先輩と1年のリーダーの後輩は、腕で大きく丸を作った。
成瀬は後ろをむけば、お約束の『ダルマさんが転んだ』と言い始める。
1年生はあまり動けてない様子であり、3年生がガンガンと歩いていく。
1年生で歩けているのは、気の強そうな女の子だけだ。
一気に振り向いた成瀬。
しばらくの静寂が続き、カメラのセンサーが反応しないことを確認して、成瀬は後ろを向き直す。
1年の気の強そうな女の子は、走り始めていた。
ためる成瀬をよそに彼女はどんどんと近づいていく。
もう、タッチされるっ!
思いっきり振り向いた成瀬。
気の強そうな1年の彼女の顔が目の前に、、、
ーーーーーー成瀬聖side
咄嗟に目をつぶれば、目の前は真っ赤。
見慣れたはずの血の赤さに驚く。
腕で顔を拭えば、腕についたのは予想通り…というか当然のように血。
少し下を見下ろせば転がっていたのは首から血を流す少女の姿。
振り返った際に一瞬、目に移ったのは彼女だったかと納得した。
頭につけたカメラセンサーの音が耳障りなのは、予想通りだった。
が、ここまでだと知らない。
いや、考える間もなくなかったんだから。
まあ、そんなことはどうでもよくて。
今、喜ぶべきことは1年のチームから1人、減った…という事実だ。
人の死を喜ぶなんて……と、
あの人はいうかもしれないけれど、喜ぶしかないのが現状。
それにあの人との約束を果たすには喜ぶしかないのだから目をつぶってほしいところだ。
同じチームの方を見れば、1人を除いては驚いた顔をしている。
そう、1人を除いてだ。
なぜ、なのだろうか。
しかし今はそのことを考えるよりも、ダルマさんがころんだを進めなければいけない。
少し早めに言ったその言葉。
振り返れば進んでいる人がちらほら。
まあ、3年の先輩ばかりなのだが。
動いていない…と、思ったのだが、思いっきりバランスを崩してこけたのは、先程死んでしまった彼女と同じ1年生だった。
後ろの方にいたため、血がかかることはなかったが首から血を流し、そのまま生き絶えたようだった。
ためれば、ためるほど心が苦しくなっていくなはなぜだろう。
人が死ぬのは慣れた、そう、慣れたはずなのに。
振り向けば、俺の方に手が置かれていた。
俺のターンは終わり。
もう少し人数を減らしておきたかったが、勝つか負けるかで言えば1年生チームは負けがほぼ確定だろう。
おそらく2年と3年の競り合いに…、、なるんだろう。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。