お疲れ様じゃないよ。
人が死んでるっていうのに。
私も随分冷めたもんだと思う。
次もきっと人を殺さないといけない。
精神的な問題で、だ。
なんだ、『ババ抜き』か。
って、運??
運じゃないの?ババ抜きって。
アスカがウィンクしたのがはっきりと見えた。
こんなときに、かわいいわけない。
ルールーーーー、
➀チーム戦はチーム戦だが個人戦となる。
➁同チームが重ならないようにランダムに5人で一グループとなりババ抜きを行う。
➂勝者は一抜けと二抜けの2人のみで上位二人が抜けると残りはゲームオーバー。
➃生き残りが多いチームが上位8チームが勝利となり、残り人数が同じ場合はリーダーがいる方が勝利とする。
…って、はじめての個人戦なようなもの。
隣にいた成瀬を見れば、考え込んでいる様子で。
それと同時に私1人で勝ち抜けるのかという不安がこみ上げてきたがすぐに押し込めた。
心の奥底の、自分でさえもたどり着けないほどの奥に閉じ込めた。
麗仁ちゃんにそう告げる。
『また次のゲームで。』
絶対に死なない、生きてみせるという私から麗仁ちゃんへの意思表示。
絶対に、また会うんだから。
体育館を出て、私が『ババ抜き』をする教室に向かおうとしたとき、成瀬に呼びかけられる。
後ろを振り向けば、成瀬の目は私を見透かしているようで。
強気に振舞っていたのがバレているか、どうなのか。
今回は、成瀬がいない。
ヘタれたら、もう終わりだ。
第1ゲームは、成瀬を信じたら勝てた。
第2ゲームは成瀬の声のおかげで立ち直れた。
ヘタれない、ヘタれない。
だから、成瀬には何も言わずに第3ゲームに向かいたかったのに。
短い会話のやり取り。
それでも勇気をもらえるのは何故ですか?
成瀬と別れた私は教室へ向かう。
ドアを開ければ、もう他の4人は揃っていた。
掃除された教室に、似合わない円状の机。
机を囲むように、残った席に座れば分身であろう『アスカ』が現れる。
『ババ抜き』は果たして運なのか。
運だとしても、約束は果たさないと。
成瀬が生きろって、言ってくれたんだから。
麗仁ちゃんにまた後でって言ったんだから。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!