第12話

セカンドゲーム(5)
66
2019/06/14 11:02
成瀬 聖
時雨、次が始まるぞ。
時雨 梨緒
次ぃ…?
絢都が、絢都が死んだんだよ?
そんな次なんて…、余裕ない。
別に成瀬が悪くないことは知っている。
だけれど、きつく睨みつけてしまったのは、私の心が狭いから?


いいや、私が何もかもを拒むから。

成瀬の冷たい声が気に触る。
私を気遣ってか、おどおどしている麗仁ちゃんを視界から排除したい。
無駄に明るい声の3年の先輩たちの口を縫ってしまいたい。












私の背中を押した1年生を消してしまいたい。





『不』の感情…、、とでも言うのか。
マイナス思考が私を支配していく。


私の中の『悪』が私を殺そうとしている。

私の存在全てが、絢都の存在を無かったことにしたいらしい。







したいけどできないのは、私にとって絢都は大切な人だから。

いつメンで、初恋の人。
ずっとどこかに閉じ込めてしまいたい。



ゲームが終わったら付き合う約束…、、


頭で理解できていなかった過去の自分を責め立てる。
理解してよ。
後戻りできないのはわかってるけど。



あの時の違和感を、ないことにしたのは私だ。
立派なフラグが立っていたのに。






ちがう、違う違う。
私が『死にたくない』なんて思わなかったら。
心から強く願わなかったら。




絢都はまだ生きていた。
私は絢都を守れていた。
















それも、違う??
誰が悪いって?

私の背中を押した1年生。






でも、元の根源は、アスカだ。
この『フォーエバーゲーム』が私を、殺そうとしている。
絢都を殺した張本人。
成瀬 聖
時雨!!!
聖の声で我にかえる。
正確には、聖を睨みつけるために考えるのをやめた。
時雨 梨緒
なに?
でた声は自分が思っていたよりも低く冷たい。
冷酷な人間。

そんな言葉が私にはぴったりになってしまう。
時雨 梨緒
私の、私のせいで絢都が、死んだ。
成瀬 聖
時雨のせいじゃない。
『なんの根拠に!!』



そんな反発の言葉が出そうになったが、私は吐き出すのをやめる。
こいつに、成瀬に吐きだきて何になるんだ。


絢都が死んだ事実は変わらない。
私のせいで死んだことも。
時雨 梨緒
じゃあ、絢都は自分から死にに逝ったっていうの?


その代わりに出た言葉に私自身も驚く。
成瀬 聖
違う。
巴坂は、時雨を守りたかったんだよ。
時雨 梨緒
何…?
私と絢都のこと、何も知らないくせに!!
知っているかのように言う成瀬が気にくわない。

気に食わなく、仕方がなくて、
成瀬 聖
巴坂が言ってたんだ。
時雨と東雲が着替えに行っているときに。
成瀬 聖
『一度は時雨のことを振ったけど、いつメンとして一緒にいるうちに、時雨のことが好きになっていった』
成瀬 聖
『俺があいつを守りきるんだ』って、
巴坂が俺に言った。
時雨 梨緒
絢都…が?
成瀬 聖
ああ。
成瀬の瞳は嘘をついていない。
まっすぐと私を見透かす。


欲しかった絢都の言葉は、絢都じゃなくて、成瀬から溢れ出した。
東雲 麗仁
げ、ゲームを始めるそうですっ!
麗仁ちゃんの声で私は我を取り戻す。

始まるのは、絢都がいない中。





勝ってやろうじゃないか。

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