体育館の裏にひっそりと佇んでいる少し大きめの建物の入口には
"ダンス同好会"
そう書かれたプレートが掛けてあった。
建物の中からは、ビートを刻んでいるスピーカーの音と何人かが楽しそうにはしゃいでいるような声が聞こえてきた。
私はその建物の扉をそっと開けた。
中に入ると1番はじめに目についたのは大きな鏡だった。
鏡越しに見覚えのある顔と目が合った。
そう"彼"だ。
岩本「お、来た」
岩本「ようこそダンス同好会へ」
そう言って昨日と同じようにふわっと笑う。
彼の他に3人の男の子がこちらをじっと見つめている。
すると3人の中で一際目立っているピンク髪の男の子が口を開いた。
佐久間「お、君がひかるの言ってた岩咲さん?」
佐久間「ダンスは?やったことある?」
佐久間「あ俺、佐久間大介!大介先輩って呼んでね!」
佐久間さん?はぴょこぴょこと跳ねながらまるで子犬のように私にいろんな質問をしてくる。
見た目は少しヤンキーみたいで怖いなと思ったけど案外人は見た目に寄らないみたいだ。
岩本「おい佐久間、質問攻めしない」
岩本「あと俺の事呼び捨てにしない」
我が子を叱る親のように彼がそう佐久間さんに注意する。
岩本「ほら翔太と阿部も自己紹介しな」
佐久間さん以外の2人をみて彼はそう言う。
阿部「2年の阿部亮平って言います。佐久間がうるさくて
ごめんね」
そう言っててへっと笑った彼は阿部さんと言うらしい。
一見真面目そうに見えるがどこかあざとい。
阿部「翔太」
佐久間「翔太はほんと人見知りだねぇ」
2人が"翔太"と呼ぶ人。
阿部さんの隣にくっついて私の方をみている。
人見知りなんだなと思っていると"翔太"さんが口を開いた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!