第73話

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2024/03/20 10:00



莉犬
莉犬
.....!!
彼は顔を勢いよくこちらに向けた。


そこから殺伐とした雰囲気は取り除かれていた。
驚きと戸惑いで潰されていた。



あなた
覚えてるんだ。
 

あなた
研究所から逃げた日以降会ってないよね。
莉犬
莉犬
....



後ろめたい事でもあるようにまた視線を戻した。

そりゃそうか。
あなた
莉犬にい、あの後🍓組に入ったんだ。
俺は🎲組だった....真逆、




あなた
実の兄に命を狙われるなんて思わなかったけど...こうして会えたんだから俺は満足




あの時の「莉犬にい」のまま時が止まって動かない俺と、あの時の「あなたの下の名前」しか見えてない莉犬にい。


そして彼自身が、探していたはずの弟をだと知らずに「死神」を探し出すことに奔走してた。



なんて悲しい状況だろうか。

君は俺を殺すのか─────?



口を離してやると、肩で息をする莉犬にい。


莉犬
莉犬
ほんとに....あなたの下の名前な、訳?






愚問。



嘘をついてどうするんだよ。


あなた
そうだよ。
死神は君の探していた弟だよ。





状況を信じ難いとばかりに目を泳がせる。

手錠は掛けたまま。





あなた
.......信じてなさそうだね。
確実な証拠を見せてあげる。







フードを脱いで黒いマスクの紐を指で引っ掛けて取る。





そして、わざとそのままにしていた長い前髪をあげた。
莉犬
莉犬
!!!



前髪を上げたことで一瞬でわかったはずだ。








僕と君は同じオッドアイなんだから─────







莉犬
莉犬
あなたの下の名前......?
あなた
あなたの下の名前だよ。




前に2度ほど彼には殺されかけた。


彼の偶像を追い続ける姿は見たくない。
だからこれで正解なんだ。




途端に零れ落ちてくる涙。


透明で純粋で不規則な丸い粒。
莉犬
莉犬
あなたの下の名前、ッ.....(泣
ごめん......ごめんねッ....




素直な所もすぐ泣いちゃう所も、変わってない。

🍓組に入ったこと以外は残ってるんだ。
それを見て安心して、ふと莉犬にいを地面に押さえつけてた手を離して正面から抱きしめた。



莉犬
莉犬
あの時俺が気づかなかったから...(泣



あなた
.....ううん、




あなた
俺は今の人生に後悔してないよ。




莉犬
莉犬
(グスグス




泣き続ける兄の背中を撫でる。

あなた
.....莉犬にいのこと、俺が殺せると思う?





あなた
殺したくないから、お願い。
周りの人間とも約束してあるんだ。























あなた
🎲組の人間になって欲しいの。
莉犬
莉犬
......!


ぐしょぐしょの目元で俺を見つめた。


怖いだろうね、🍓組を裏切るなんて。
あなた
絶対に痛いことも拷問も莉犬にいが嫌なことはやらせない。ないく...幹部たちは同意してくれた。



でも、🎲組も負けてないから。

簡単に突破できるような生ぬるいセキュリティでも無いし命は絶対に俺が守ってみせる。





あなた
おいでよ。





無表情に慣れた口角で必死に問いかける。








莉犬
莉犬
でも、裏切ったら....!



莉犬
莉犬
俺が殺される...!
あなた
何言ってるの、莉犬にい。




あなた
俺、🍓組にも殺せなかった死神だよ?
莉犬にいの事は絶対守る。




莉犬
莉犬
.......



あなた
....(チラ

静寂が2人を包んだ。























莉犬
莉犬
......俺、あなたの下の名前と居たい。
🎲組に入れてください。






あなた
!!!







あなた
やった....!!

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