第10話

迷い
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2019/03/09 05:40
西崎 春斗
菜乃花ちゃん!
おはよう!
橘 菜乃花
え?
あっ!
春斗くん!おはよう!
西崎 春斗
き、昨日は、ありがとう!
橘 菜乃花
う、ううん!
こちらこそありがとう!
西崎 春斗
またどこか一緒にいこうね!
橘 菜乃花
そうだね!
雨宮 澄人
おはよう、菜乃花!
橘 菜乃花
あっおっおはよう!
雨宮 澄人
何でそんな噛んでるの
そう言うと、澄人は笑った。
西崎 春斗
あ、じゃあまたね!
菜乃花ちゃん。
橘 菜乃花
うん、また!
雨宮 澄人
…菜乃花って、西崎のこと、春斗くん呼びだったっけ?
橘 菜乃花
あ…仲良くなったから
かな?
雨宮 澄人
…。
橘 菜乃花
澄人?
雨宮 澄人
またって…
橘 菜乃花
また?
雨宮 澄人
また、どこか一緒にいこうって、日曜日、あいつと出掛けたの?
橘 菜乃花
…うん。
橘 菜乃花
(どうしてだろう。
春斗くんとはお礼だから出掛けただけなのに。
なんだか後ろめたい気持ち。)
雨宮 澄人
…二人で?
橘 菜乃花
…うん。
雨宮 澄人
…そっか。
橘 菜乃花
…うん。
あの、澄人?
雨宮 澄人
ごめん、もう行くわ。
橘 菜乃花
待って!
あの、怒ってる?
澄人は、立ち止まった。
雨宮 澄人
ごめん、じゃあ。
しかし、すぐに行ってしまった。
橘 菜乃花
(あぁ。
私は、なにをやっているんだろう。
澄人のとなりにいるって、決めたのに。
…それなのに。)
菜乃花は、あのとき、澄人に再開したばかりの時と同じ、虚しさに襲われていた。
しかし、すぐに澄人からラインがとどいた。
雨宮 澄人
〈今日、一緒に帰れる?〉
橘 菜乃花
〈うん!もちろん!!〉
澄人のラインを見た菜乃花は、安堵した。
―放課後―
橘 菜乃花
澄人!
雨宮 澄人
菜乃花。
じゃあ、行こうか。
橘 菜乃花
う、うん。
橘 菜乃花
(なんだろう。
やっぱり怒ってるのかな?
表情が暗い。
それに、口数も少ない。)
しばらく歩くと、澄人は口を開いた。
雨宮 澄人
あのさ
橘 菜乃花
う、うん?
雨宮 澄人
西崎のこと、どう思う?
橘 菜乃花
え、優しくて、ヒーローみたいな人…かな?
雨宮 澄人
…ヒーロー、ね。
橘 菜乃花
昨日もね!
私がヤンキーに絡まれてたら、助けてくれたの!
雨宮 澄人
そう。
確かにヒーローだね。
ごめん、俺が助けにいけなくて。
橘 菜乃花
ううん!
昨日は春斗くんと出掛けてたから!
雨宮 澄人
……。
橘 菜乃花
(あっ…。)
雨宮 澄人
ねえ、菜乃花はさ俺と西崎だったら、どっちの方が好きなの?
橘 菜乃花
え……澄人、だよ?
あっあ当たり前じゃん~。
菜乃花はわざとらしく笑った。
雨宮 澄人
(…。
即答しなかった。
もしかしたら、もう、気持ちは向こうにあるのかもしれないな。)
橘 菜乃花
(どうして?
即答できなかった。
私が好きなのは、澄人だけなのに!
なのに…。)
しばらく無言で歩くと、お互いの家への分かれ道が来た。
雨宮 澄人
…じゃあね。
橘 菜乃花
うん。
また。
そう言うと、二人はそれぞれに帰っていった。
家につくと、澄人は考えていた。
雨宮 澄人
(恐らく、菜乃花の気持ちはもう、春斗にある。
悔しい。悲しい。辛い。
けど、よく考えてみると、この方が、菜乃花にとっては幸せなのかもしれない。)
雨宮 澄人
(俺はもうすぐこの世からいなくなる。
だけど、あいつは、西崎は、まだまだこっちにいるはずだ。
だったら、あいつの方が、菜乃花を幸せに出来るんじゃないだろうか。)
雨宮 澄人
うっ…
ううぅぅ~
ああぁ~
雨宮 澄人
(やばい。
苦しい。
誰か、助けて。)
澄人の母
澄人?!
大丈夫!?
澄人っ!
澄人は、首を横にふった。
澄人の母
澄人!
数分後、その苦しさは収まった。
しかし、澄人の中には、恐怖と悔しさと、
色々な感情が渦巻いていた。
雨宮 澄人
(俺は、どうしたらいいんだろう。
どうするべきなんだろう。)
そう、自分に問い続けた。

そして、何かを決意したような顔に変化した。
一方の菜乃花もまた、家で一人で自問自答を繰り返していた。
橘 菜乃花
(私は、澄人のことが好き。
私は、澄人のことが好き。
そうだよね?
じゃあどうして、即答できなかったんだろう。
もしかして、春斗くんのことを…?
いやまさか!
でも、確かに春斗くんのことが気になるのも事実。)
橘 菜乃花
(じゃあやっぱり、私は、澄人じゃなく、春斗くんのことが…。)
橘 菜乃花
(ううん。まだ、分からない。
明日、学校にいったら、自分の気持ちを確かめてみよう。)
そして、二人は、眠りについた。

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