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──10分ほど経って、ドアが開いた。
義姉さんが顔を覗かせる。
義姉さんがドアを閉めてくれたのを確認して、そこから近い俺の勉強イスに座ってもらう。
......うん、いつもの義姉さんだ。
っていうふうに、前はなったんだけどな。
なんで違和感を感じてしまうんだろう。
明確にどこがってわけじゃない。
けど、なにか引っかかる......。
義姉さんの顔色は変わらない。
少し口角を上げたまま、俺に問う。
............あー、違和感ってもしかしてこれのことか。
目の前の義姉さんの顔がさっと曇る。
やられた、みたいな顔で義姉さんはその顔を伏せる。
なんで、そんな反応するんだ......って、俺自身はなんとなく分かってしまっているんだけど、さ......。
伏せられた顔を、覗き込むようにして俺は訊ねる。
義姉さんは、どうして今、苦しんでいるのか。
きっと認めたくなくて、必死に隠してるんだろう。
俺にも、......義姉さん自身にも。
──しばらくの沈黙の後、義姉さんは口を開いた。
よく耳をすませていなければ聞こえないような、か細い声で。
膝の上で震えている手を、握りしめながら。
義姉さんは確かに、そう言ったんだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。