side.田中樹
おかしいとは思ってた。
SixTONESのときも、裏のときも…
眠りについたあと、必ずと言っていいほど魘されるから。
でも、本人も何も言わなかったし仕事とかに支障はないみたいだから放置してた。
でも……もしかしたら、しっかりと気にかけた方がいいのかもしれない。
だって今日の彼奴、起きた後怯えてたから。
いつもの夢なんだろうけど……
でも、あんなに怯えを含んだ表情を見るのは初めてだった。
俺がどう頑張ろうとも北斗のことを助けることは出来ない。
彼奴は自分を犠牲にする奴だから。
だから、仲間の俺たちにも弱い面は見せない。
それが悔しくて、苦しくて堪らない。
別に北斗が悪いわけではないし、他のメンバーたちが悪いわけでもない。
だって自分の弱い面を周りに見せたくないのなんて普通だと思うから。
そんなの俺もだし。
でもやっぱり、自分は北斗に信用されてないから相談されないんじゃないか…
そう思ってしまう。
こんな自分が、俺は嫌いだ。
北斗のことが大好きで守りたいから、どうしても他の誰よりも早く助けたくなる。
小さい頃から女の子たちにモテてきたけど…
でも、北斗へのこの想いはやっぱり特別だった。
甘やかしたいって、守り抜きたいって思った。
そう思ったのは、本気で恋をしたのは…
北斗が初めてだったんだ。
北斗は高地に頼ることが多い。
理由は聞いたことないけど……
まぁ、2人の間には目に見えなくて切れない絆みたいなのがあるんだと思う。
俺と北斗には……それがないだけ。
ただ、それだけなのに……
それなのに、勝手に自分で高地に負けたような気分になってしまう。
俺、こんなにダサかったっけなぁ…
「もん」って……
この言葉が似合うの此奴ぐらいじゃね?
北斗が俺に声かけるなんて珍しすぎる……
しかも…
“裏”の話し合い中に。
…ん?「俺の補助」?
まさか………
“情報操作”?
まぁそれなら俺が適任か……?
でも……
俺らはいつも“最悪”を考えて行動する。
“もし”こうなったら?
“もし”失敗してしまったら?
そういうリスクを考え、それでもやるってなったら全力で取り組む。
そんな組織。
なるほどなー。
ベガと俺が情報操作で向こうに行った動作によってうちに入り込んできたウイルスをミラに処理してもらうってことね
流石リゲル。
こういうときは凄い頭の回転が速い。
いつも計画の最終決定は俺がする。
俺が1番“最悪”を考える人だからな。
今さっき、パパッと人脈を使って相手の情報を集めた。
そしたら、ボスの側近…戦闘向きのね。
…まぁ、その側近に女性がいた。
女性が恐怖の対象である高地は攻め込まれたら一発でアウト。
しかも高地がいるのは医務室。
医務室は狙われる可能性も結構高いしな。
リゲルはスピカのこと大好きだしね。
こっちの方がやる気出るでしょ。
少し申し訳なさそうな高地。
別に女性が恐怖の対象っていうのは悪いことじゃねーのにな。
やっぱ、この2人って何かしらの関係があると思うんだよな…
こんな一瞬で高地を笑顔に出来る人なんていないって。
……さぁ、計画の決行は今日の夜。
俺らが出来る全力をしなきゃな。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!