ころんside
あれから僕は部屋に戻るまえに顔に細かい砂がついていたから顔を洗いにいった
ふと前を見ると鏡にうつっている僕と目が合う
僕の醜い顔が僕を拒絶する
頬から水滴が落ちる
水滴を目で追うと,自分の手に目線がいく
指の皮膚が軽くはがれている
おそらくさっきみんなが言い争っていたことの,僕がさとみ兄ちゃんのことを殴った痕だろう
。。。。。。
薄暗い部屋で一人でずっと考える
僕には殴った記憶はない
でもさっきのさとみ兄ちゃんの顔にはかすり傷がたくさんついてた
大きな絆創膏が貼られてた
とても痛々しい顔をしていた
ずっとあの顔が脳裏をよぎる
あんな姿に僕がしたと思うと胸が痛い
頭が痛くなる
ドクンドクン
そうだ…
もともとこの心臓がなければ
僕はさとみ兄ちゃんを殴ってないし
もっと言えば僕は生まれていないし
。。。。。。
さとみside
静かだな…
兄ちゃんは帰ってきた瞬間目を丸くして近づいてきた
そしてしばらく沈黙が走り
兄ちゃんが口を開いた
俺は兄ちゃんが何を言おうとしているかわかった
どうやら図星のようだ
俺はここぞとばかりに俺の思いを吐いた
。。。。。。
兄ちゃん達がころんを嫌う理由はわかる
小さい頃にころんを庇って俺たちの母さんが○んだから
でも、だからってころんが悪いってことでは断じてない
なのに、みんなころんのせいにしている
そのせいでころんは自分のことを追い詰めている
心のよりどころがなくっている
だから俺がころんを安心させる存在になろうと思った
だけどできなかった
ころんはきっと、伸ばせるはずの羽がずっと縮こまっている
それが何よりも辛い
わかるよ
だって
俺の羽はどんどん黒くなっていっているから
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。