自分はスメーラルト領主第1夫人の子供で、スメーラルトの第2王子
第2王子でも、第1夫人の子供ならば第1の領主候補として育てられるのは至極当然のこと
ずっと、ずっと、自分が第1王子で、第1夫人の子供だと思っていた
…彼の洗礼式までは
コンコンと短いノックがなる
あの時の教師の目は今でも覚えている
…あの後は酷く叱られた。
あの時、カーヴェの育ち方を聞いた
「羨ましい」
湧いた感情はそれだけだった
自分は娯楽に触れたことなんて1度もなかったのにカーヴェは好きな分野の本を読めて、触れて、見ることが出来た
この言葉で何かが壊れた。今思い返すとそう思う
それからはなんだかぼんやりとした記憶だった
利益を求め、利益のためなら何でもする。欲した利益でなくとも
覚えていることはそれぐらいだった
記憶がはっきりとし始めたのは、あの日からだった
何となくで発した言葉だった
彼女が取り繕う姿を見て、「あぁ、同類だな」と思った
だけど、彼女は少し違った
自分のようにひたむきに感情を伏せ人形になっているんじゃなく自分の意思で、自分で…
彼女と再開して、不安の声を聞いた
思ったのは、嫉妬だった
何故彼女は隙を見せても誰も怒らない?自分は怒られるのに。何故隙を見せられる環境にいるのに不安を覚える?
駄目だ、考えては
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!