第35話

能ある鷹は爪を隠す
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2023/08/31 05:50




紫苑は透璃からの指示に従って南南西へ進み、比較的広い林に入った。


_御霊 紫苑@みたましおん_
御霊 紫苑みたましおん
ここで他の隊士と合流するのよね?
鎹鴉(透璃)
ソウ。
_御霊 紫苑@みたましおん_
御霊 紫苑みたましおん
(姿が見えないけれど…もう奥へ行ってしまったのかしら)

_御霊 紫苑@みたましおん_
御霊 紫苑みたましおん
早めに見つかればいいのだけれd




きゃあああああ…!








遠くからかすかに悲鳴が聞こえた。
_御霊 紫苑@みたましおん_
御霊 紫苑みたましおん
っ!…あっちのほうね。




















悲鳴が上がったその場所では、鬼と隊士が向かい合わせに睨み合っている。



隊士は二人。片方は女性で、一人の男性隊士を抱き寄せて座り込んでいる。男性隊士はかなりの深手を負っていて、意識がなかった。


対する鬼は随分と余裕そうに、手に着いた血をペロリと舐めた。






おいおい、これで終わりか?随分弱っちいな!呆気なさすぎてつまんねえぜ!ハハハ!






隊士
っ…どうして私を庇ったのよ、バカ…!
女性隊士は、腕の中の男性隊士に、つぶやくように文句を言う。しかしそう言いながらも彼女の目は潤んでいた。
隊士
(この鬼…力が強すぎる。攻撃を受け止めただけで刀がバキバキに折れた。しかも動きが早くて見きれない…)
隊士
(もう一人が合流する前に鬼を発見したからって、深追いしなければよかった…)
どうやら、攻撃をまともに受けそうになった女性隊士を、咄嗟に男性隊士が庇ったようだ。






さあどうする?刀は使い物にならず、仲間は戦えない。助けを呼んだって間に合わないぜ?惨めに死んでいくやつを見るのは滑稽だなあ!



隊士
っ…(ダメだ…どうしようもない…ここで、死ぬの…?)ポロポロ






アッハッハッいいねえ絶望してるか!そりゃそうだ!今から俺になぶり殺しにされるんだからな!さあ死ね!


鬼が手を振り上げる。


隊士
(嫌だ…!今死んだらこの人まで死んでしまうのに!!!)
















ジャキンッ!!!










隊士
……え?
覚悟した痛みが来ないことに驚き、顔を上げた隊士が目にしたのは。










_御霊 紫苑@みたましおん_
御霊 紫苑みたましおん
そこまでです。今からあなたの相手は私ですよ。



腕をすっぱり斬られた鬼と、その後ろに凛と佇む紫苑の姿だった。




隊士
……!もしかして、あなたが…
_御霊 紫苑@みたましおん_
御霊 紫苑みたましおん
はい。駆けつけるのが遅くなりすみません。その方を連れて離れていてください。
_御霊 紫苑@みたましおん_
御霊 紫苑みたましおん
すぐにカタをつけますから…


隊士
!(ダメだ、こいつのことを知らずに戦えば、私の二の舞になる!)
隊士
こっ、この鬼は目立った術こそ使わないけれど、力が異常に強く足も速いです!
_御霊 紫苑@みたましおん_
御霊 紫苑みたましおん
(なるほど。)

てめえ黙ってろ!(拳を振りかぶる)
隊士
きゃあ!




その次の瞬間、紫苑は鬼と隊士の間に滑り込み、攻撃を受け止めた。



ガキンと大きな音こそしたが、刀はビクともしない。
は…?
_御霊 紫苑@みたましおん_
御霊 紫苑みたましおん
今のうちに。
隊士
は、はい!





お前、なぜ俺の攻撃を受け止められる?さっきのやつはそれだけで刀が折れたぞ。
_御霊 紫苑@みたましおん_
御霊 紫苑みたましおん
刀のことをしっかり勉強しているからでしょうかね?そもそもあなたには関係ありません。
ハッ、だが受け止めただけじゃ俺は倒せないぜ?俺の力に勝てるか?
グググ…と鬼は力を強める。
_御霊 紫苑@みたましおん_
御霊 紫苑みたましおん
へえ…確かになかなかの力ですね。押し負けそうです。
そんなに小さな身体じゃ限界があるだろうな。それに加えてお前は女だ。どうやっても男には敵わない。諦めるんだな。
_御霊 紫苑@みたましおん_
御霊 紫苑みたましおん
ふーん…あなた、私が女で身体も小さいからって、馬鹿にしているでしょう?
ああしてるとも。それがなんだ?
_御霊 紫苑@みたましおん_
御霊 紫苑みたましおん
人を見かけで判断するのは……良くないですよ?


紫苑はいきなり刀の向きを変え、拳を受け流した。

なっ?!



一瞬己の手元に目をやった鬼が再び紫苑の方を向くと、、、






既にそこには誰もいない。

あ、あいつどこいった?!














_御霊 紫苑@みたましおん_
御霊 紫苑みたましおん
能ある鷹は爪を隠す…私に能があると自慢したいわけではありませんけど。







どこかから紫苑の声がする。




(?!上か?!)
そう気づいて鬼が上を見あげた頃には、もう遅い。











_御霊 紫苑@みたましおん_
御霊 紫苑みたましおん
力ではあなたに劣りますが、技術と速さでは、負けるつもりはありません。







ズバッ!




…という音をたて、鬼の頸は落ちた。






塵になる鬼を見下ろし、紫苑は呟く。
_御霊 紫苑@みたましおん_
御霊 紫苑みたましおん
体術戦を主とした戦い方…極めれば、上弦の参のようになれたかもしれませんね。
_御霊 紫苑@みたましおん_
御霊 紫苑みたましおん
…まあ、もう叶わないのですけど。


































男性隊士を背負って蝶屋敷へ走る紫苑の隣へつき、女性隊士は紫苑にお礼を述べる。
隊士
御霊さん…でしたよね。本当にありがとうございました!
_御霊 紫苑@みたましおん_
御霊 紫苑みたましおん
元々私の到着が遅れたせいなので、気にしなくても結構です。
隊士
それでも、あなたが来てくれなかったら、私も彼も死んでいました。あなたは命の恩人です。
_御霊 紫苑@みたましおん_
御霊 紫苑みたましおん
…私なんかがあなたの恩人になれたのなら、光栄なことです。
_御霊 紫苑@みたましおん_
御霊 紫苑みたましおん
とにかくこの方は一刻も早い治療が必要…蝶屋敷へ急ぎましょう。
隊士
はい!








































朝になり、隊士を蝶屋敷に送り届け、さあ一度家に戻ろうかと紫苑が屋敷の門をくぐって出たところで。





神崎アオイ
神崎アオイ
やめてください!!!



アオイの叫び声が聞こえた。
_御霊 紫苑@みたましおん_
御霊 紫苑みたましおん
(……?)
















作者
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