学校の正門に辿り着くと、何故か沢山の生徒や先生達が校庭や玄関前に集まって戸惑った表情をしていた。
星來「なんだろう、中に入れないのかな?」
陽葵「おかしいな…あれ?」
時間を確認しようとスマートフォンを取り出した陽葵が不思議そうに首を傾げる。
陽葵「星來見て、携帯が圏外になってる。」
星來「…ほんとだ。今までなった事ないのに…なんでだろう。」
星來は自身のスマートフォンを取り出して見るが、やはり同じように圏外。
まぁいいや、とスマートフォンをポケットに仕舞い直したところで、後ろから肩を叩かれ振り返る。
そこには、同じクラスの大地《だいち》と湊《みなと》が立っていた。
湊「おはよう2人とも。なんか、あっちの方で2人ずつペアになって受け取るものがあるらしいぜ。」
陽葵「ペアで?何が貰えるのかな〜?」
湊「よくわかんねぇけど、なんかゲームでもすんじゃねえの?」
星來「ゲーム?小学生じゃあるまいしないでしょ。」
そんなくだらない事で担任に呼ばれたならアホらしいも良いとこだ。
正面玄関まで行くと、教室にある筈の勉強机がポツンと置いてあり、その上に2色の紙人形が束になって置かれていた。
陽葵「えーとなになに〜?『2人組のペアを作り、赤と白の紙人形1枚ずつを取って無くさないように持ち歩く事。』…なんだそりゃ!」
大地「よく分からないけど、一応取っておこうか。」
大地と湊が紙人形を取った後に続いて、星來と陽葵も紙人形に手を伸ばす。
星來は白、陽葵は赤を受け取ると、「星來とペア!嬉しい。」とにっこりと笑って言った。
周りを見回すと、大衆も2人組のペアで紙人形を手に持ち、何が起きるのかと不安そうな面持ちである。
呑気なのは我々だけだったのかもしれない。
突然、ブツッと校内放送のスピーカーが音を鳴らした。
これが、絶望の始まりだった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。