第7話

🖤6.俺のこと
290
2024/03/12 09:37
side蓮
『この後、時間ある……?』
彼女に話したいと思った。
俺がまだ彼女に伝えられてないこと。
「はい。この後は予定ないです」
「あなたの名字さんと一緒に行きたいところあるんだけど……ダメ??」
「ダメじゃないです、行きたいです!!」
「よかった。食べ終わったら行こっか」
「はい!急ぎますね!!」
「ふ、w急がなくていいってww」


急がなくていいって言ったのに、彼女はリスみたいに口いっぱいにタルトを詰め込んでた。

そんな姿もかわいい。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
車を走らせて、40分くらい。

やってきたのは、都心から少しはずれたところにある丘のような場所。
周りの土地より少し高さがあるから、見晴らしがいい。
「……すごく、きれい」
「でしょ。たまに来るんだ。息抜きしたいときとか、失敗して落ち込んでるときとか」
「……目黒さんにとって、とても大切な場所ですね」
「うん。だいじな場所だよ」
「大切な場所に私を連れてきてくれて、ありがとうございます」
「こちらこそ。一緒に来てくれてありがとう」
お互いの目があって同時に微笑む。
おとずれた沈黙。
でもそこに気まずさはなかった。
穏やかで安心するような雰囲気がふたりの間には流れていた。
「……あなたの名字さん」
「……はい?」
「俺、今日話したいことがあって、あなたの名字さんにここに来てもらったんだ」
「はい。なんとなく何かあるのかなって思ってました」
「バレてたかw」
「まぁ、目黒さんの家政婦ですから!w」
「心読まれてる??w」
「さすがに無理ですって!w」
「冗談だってw……あのさ、俺の話聞いてくれる??」
「はい。もちろんです」
誰かに自分のことを話すのってすごく緊張するし、勇気がいる。
でも、それを乗り越えた先では、もっと踏み込んだ関係が築ける。

俺は、あなたの名字さんと今よりももっと深い付き合いをしていきたいから。
「……俺は、あなたの名字さんに隠してたことがある」
あなたの名字さんの瞳がまっすぐ俺を見ている。
だから、俺も彼女の瞳をまっすぐに見つめ返した。
「俺は……」
心臓が早鐘をうつ。





「……俺は、目黒蓮なんだ」

プリ小説オーディオドラマ