第15話

🖤14.提案
153
2024/04/12 10:05
「今、頼る人いないんだよね……?」


目黒さんの問いかけに、間違いないと頷く。



「じゃあさ、ここ、くる?」


理解が追いつかなかった。



「……え、と。今の言い方じゃ、目黒さんが私とここで一緒に住むって聞こえるんですが??」



「うん。それで合ってる。俺とここで住まないかっていう、提案なんだけど……」


なに言ってるの……!?

驚きのあまり声も出ない。



だってだって、目の前の目黒さんはアイドルで。




しかも、国宝級イケメンとか言われてて。




それに対して私はただの一般人。

名家の生まれでもなければ、特別に秀でた何かがあるわけでもない。


「…嫌ならいいけど、あなたの名字さんはどこで暮らすの?」


「嫌とか以前に、ダメっていうか…私はしばらく、ネカフェとかビジネスホテルで過ごします!!」


「何言ってんの。ネカフェとかビジネスホテルとか、危ないって」


「大丈夫です!すぐに新しい住居をさがすので」


「……それなら俺の家でいいじゃん。てか、なんでダメなの?」


ダメなものはダメだ。



万が一にも、家政婦と友達は許されたとしても、



同居なんて許されるわけない。



全国の〝目黒蓮〟のファンに顔向けできない。


「なんでって、目黒さんは芸能人じゃないですか」


ピクって目黒さんの眉が動いた。


「同居とか、ファンの人達に顔向けできないです」


ふーっと目黒さんが息を吐く。


「俺たち、友達じゃなかったの?」


「……え?」


「あなたの名字さんは今、俺のことを〝芸能人の目黒蓮〟として見てるでしょ」


「それ、は……」


図星だった。



私は今、〝友達の目黒さん〟じゃなくて、〝芸能人の目黒蓮〟として彼を見ていた。


「俺は、あなたの名字さんともっと近づきたいと思ったから、友達になったんだ。あなたの名字さんは、違った??」


「違わ、ない」


「そっか。……俺と一緒が嫌で同居を断るなら構わないし、受け入れるけど、」



目黒さんの顔が、



苦いものを口にしたときのように、歪む。


「周りを気にしてるとか、俺が芸能人だからって理由なら、少し悲しい」


あぁ、ほんとにその通りだ。


私は今まで何を見てたんだろう。



目黒さんの。



自分自身の。



今やっと、目の前の自分自身と向き合う。

プリ小説オーディオドラマ