(-side琥珀-)
蓮希が悩みを全部打ち明けてくれた時
1年ぶりに笑っているところを見た。
やっぱり蓮希には笑顔が一番似合う
改めてそう思った瞬間だった
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「琥珀、なんかいいことでもあった?笑」
メンバーのひとりが聞いてくる
「え、とくにいつも通りだよ笑」
「いつもより楽しそうww」
そんなに俺顔に出てるかな...笑
蓮希はあの日から昔のように
沢山話してくれるようになった。
仕事の見学にも、参加してくれる。
「休憩入ってくださーい!」
『こはくん!おつかれさま!あ、もう私そろそろ学校行かなきゃいけないからまたね!』
「うん、またね!」
ここ最近忙しくて学校にあまり通うことが出来ていない
とくに授業についてけないとかそんなことは無いけど
仕事ばっかで学校に行きたいな....
でもあと1週間後には全国ツアーも始まるし当分は行けないだろうな...
cryptographのメンバーは6人で結成されている。
ふたり高校3年生のメンバーがいて
あとは俺とおなじ高校2年生。
俺だけじゃなくてほかのメンバー5人も学校行けてないから我慢しなきゃ...
それに今回のLIVEはかなり大切だから。
いろいろありながらも3ヶ月
cryptographの全国ツアーも残り1公演となった
今日のLIVEは
俺にとって一生忘れない思い出になるであろうLIVE。
蓮希も、もちろん来てくれているはず。
いつも以上に全力で頑張るぞ!
「今日は琥珀のためのLIVEです。全力で頑張っていきましょう!」
「せーの!」
『\\\\cryptograph////』
LIVEも終わりに近づき
ラストソングになる
ついに俺の出番がやってくる。
「それではここでラストの曲に行く前に琥珀から皆さんに、ある人に向けて話があります!琥珀おねがい!」
「....わ、なんか緊張するな笑」
今日は
蓮希に。
「今日は僕の幼馴染に伝えたいことがあってこの場を借りて伝えます。」
あの日から本当はずっと伝えたかった。
「僕には...生まれた時からずっと一緒の2人の幼馴染がいます。」
失ったものが大きすぎて言えなかった。
「でも、1年前の今日。交通事故で1人の大切な大切な幼馴染を亡くしました。」
会場が一気に静まりかえる
「だからなんだってなんでこんなこといちいちここで言うのって思うかもしれませんが、」
蓮希は全部俺に伝えてくれた。
紅葉が亡くなってからおもっていたことすべて。
「俺はあいつが交通事故にあったって聞いた時。自分が今聞いてることは現実では無いんじゃないかって思いました。でも親から聞いて本当なんだってわかって、それで...」
込み上げてくる涙を必死にこらえる
「俺のせいだって、交通事故にあう前告白されて。断ったから。だからそのせいで自分から突っ込んでったのかなとか。でも話を聞いてると救急車が来るのが遅くて助からなかったから悪くない。そう分かりました。」
蓮希のことを目で探す
「知った時は辛かったしお葬式とか泣いたけど。俺以上に傷ついてる人がいま、した。それが」
「僕の元カノです。」
俺のファンの女の子達がみんな顔を上げる。
「cryptographでの活動を休止していたあの1ヶ月は、彼女と別れたりしていろいろと辛かった時期でした。みなさんには迷惑かけてほんとにごめん。」
ようやく蓮希を見つけ
蓮希の方に視線を向けながら続ける
「彼女は幼馴染が死んだのは自分のせいだと本気で思っていた。だから自傷行為も沢山してたし。死のうともしてた。でもやっと最近笑顔を取り戻した。」
「僕が彼女に伝えたいのはいや、聞きたい?って言った方がいいかな」
蓮希が泣いている
「心は、精神は浄化されたかな。」
「...これはファンの皆さんに向けて。死にたいって思ったら僕に話してください。できる限りのことはします。」
「そして、僕はいまも彼女のことが好きです。学校とかあまり行けてないけどそれでもずっとずっと彼女は特別だと思ってます。」
会場からは、すすり泣く声や
驚きの表情をしてる人
多数の人がいた。
「...って話を伝えたくて言葉を借りました笑ごめんね。こんな重たい話して..!」
無理やり笑顔を作って場の雰囲気を元に戻す。
「それでは最後に歌う歌はcryptographのデビュー曲。そして彼女に1番届けたい。「かんじょう」です!」
いつでも辛い時に相談に乗るから
感情沢山ぶつけてね
そんな気持ちを込めながら
蓮希とみんなに
全力で歌う。
「ありがとうございました!!!以上!cryptographでした!!」
cryptograph
愛の暗号。
蓮希の辛いことに触れて精神を浄化する
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!