※この作品は、北山さんが「日本人妻」に出演していた時の作品です。
(俺は夢を見ているのかな?)
(目を覚ましたら何故だか藤ヶ谷が俺んちにいてよ)
(キッチンで朝飯を作っていて)
小首を傾げつつ洗面台へと向かう俺「待て、昨日…俺たち何をしていたっけか?」
(んっ?なんか頭の中に映像が流れ込んで来たぞ)
(藤ヶ谷さんが呼んでいる)
急ぎ洗面を済ませリビングに戻れば、テーブルの上には既に朝食が並べられていて。
ニコニコと、まるでいつも横尾さんに向けているような笑顔で俺に納豆を差し出す藤ヶ谷。
(分からない…)
(この現状が意味するものが一体なんなのか?)
1時間後…
その瞬間、自分の口にチュッと重なった藤ヶ谷の唇「えっ、えぇーっ!?」固まる俺の耳元で。
カァーッと耳まで顔が赤くなった「きっ、キングが、きっ…」
その後、どうやってテレビ局まで行ったのか。
出川さんは、いつもと変わらない。
こうして1日は明け、この先の自分に新たな人生の1ページが開くきっかけになろうとはまだ思ってはいなかったこの頃「世の中には、もう1つの世界がある」だなんて。
それから家へ帰ったら、いつもと変わらない部屋。藤ヶ谷の痕跡は忽然と消えていて…
起きたとき洗面台には確かに2本の歯ブラシがあった、違和感を覚えながらも洗顔を済ませたのを今でもしっかりと記憶に残っている。
まるで、誰かと同棲しているかの如くキッチンにはペアカップや茶碗そして何よりもリビングに並んで置かれていた2人のあのギター。
ガチャ!
と、そこへやって来た横尾さんと藤ヶ谷。
ちらっチラッとその視線がこっちを見て続けざま、ガチャ!
とたん視線が外れ今日はレギュラー番組の収録日。
藤ヶ谷は何事もなかったかのように横尾さんと話し「やっぱり、あれは夢か?にしては随分とリアルだったな」自然と指が唇に触れた柔らかい感触を思い出すかのように。
(もうやめよう気にするだけ無駄さ誰にでもある心の奥に秘めた願望)
それが夢として現れたのに過ぎないと、俺はこの時そう思い込もうとしてたのかもしれない視界に映る藤ヶ谷を見ながら。
数日後…
この日、俺とニカは一緒に仕事をし。その帰り…
宮田とタマはメンバー内でも公認のラブラブのカップル実は結構な妬きもち焼きでもあるタマがデビューしてからハジけ飛んでいる宮田にキレること数知れず、それをいつも隣でなだめているのが横尾さんと藤ヶ谷だった。
(この2人いま同棲しててよ)
(こいつの綺麗好きは半端ないから俺ついていけないもん息が詰まりそ)
それからニカと別れ自分のマンションへ帰り着いたのが午前0時「アルコールが残っている状態で入浴してはいけません」
(だっけか…ふっ)
夢うつつ誰かの温もりを布団の中で感じた気がした
あまーい香りと共に…
翌朝「北山…起きて‥北山」(誰だ俺の名を呼ぶのは)
眼を開けると窓から差し込む陽の光りを背にし覗き込んでいる見知った顔があった。
(まただ…)
(これこの間の夢の続きか?)
キョロキョロと辺りを見渡し「うん、この景色覚えている。しかしなんで?夢って普通続き見ないものなんじゃ」
ニコッと笑い、俺を手招きする藤ヶ谷。
こういった場合、相手に合わせるしかない。
ポンポンとソファーで自分の隣を叩く。
(なんだか照れ臭い…)
と、グイッと頭に手をかけ向けられて俺の顔をジーッと見つめ。
(んーこれは現実?はたまた幻)
キョトンとした顔をしていると。
(えぇーっ!?)
頭の中がパニクに陥る、一体なにが起きているのかついてはいけず。
(げげっ、藤ヶ谷が藤ヶ谷がぁ~)
ドタドタドタ!
クスクスクスッと 後ろから笑い声が聞こえた「俺、おちょくられているのかな?」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。