第50話

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2018/08/06 07:44

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「……ここだっけ?」


「うん、そう。わざわざありがとう」




私の最寄り駅に着いてからも




ジョングクは黙って歩いてた。




道順も聞かずに。




だから私も黙って付いて来たけど




……ちゃんとアパートに辿り着いた。




一回で覚えるんじゃ、頭いいんだろうな。




「それじゃあまた来週、」


「ジョングク、受験は?」




ずっと気になってた事を聞いてみる。




「……高校生は忘れろって言っただろ?
ていうか突然なに?」


「だって、気になるじゃない。
遊んでていいのかな、って」




そうやって怒られそうで
なかなか口に出せなかったけど




返答次第ではこの先会えないもの。




「……推薦で決まってるから」


「え」


「だからなんにも問題なし。わかった?」


「……うん」


「あなたってホントに真面目なんだな。笑」




……すみませんね。




「こう見えて学校はちゃんと行ってるから
大丈夫。気にしなくていいよ。笑」




ポケットから手を出すと




そのまま手を引いて、私を抱き締める。




「……でも、心配してくれて嬉しい」


「……うん、」


「やっぱりあなたは違う………ありがとう」


「……うん」




私がしてる事は
特別でもなんでもないのに




そんなに素直に喜んでくれて、私も嬉しい。




「……俺、さ、」


「ん……?」


「……やっぱなんでもない」


「ジョングク……?」




ジョングクが言い淀むなんて珍しい。




「……だけど、」


「…ん、」


「あなたはやっぱり特別」


「、」




“特別”っていう言葉に




年甲斐もなく胸が高鳴る。




この子はどれだけ




私を喜ばせれば気が済むんだろう……。




「私も……ジョングクは特別」




だから思わず言っちゃった。




「ホント……?」


「うん……ホント」


「……嬉しい。笑」




……やだもう。




そんなに素直になられたらきゅん死する。




「……嬉しくて離したくないんだけど。笑」


「え」




ちょっと待ってそれは困る。




離れたくなくなっちゃうよ……。




「……泊まっていい?」


「えっっ?」


「……一人じゃないの?」


「一人だけど……っ」




ていうか“泊まっていい?”って何?なんで?




「じゃあ泊めてよ。
もっとあなたと一緒にいたい」





私を離したジョングクの瞳は
思ったよりも真剣で







「……わかった、」








また、そう答えちゃった……。





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