「Ist Jin hier?」
その人は突然現れた。
「え?」
「な、何言ってんだ…?」
「そもそも誰?」
「Gibt es dort nicht Jin?」
「Ich muss noch einmal suchen...」
みんなが食堂に集まっていた夕食時。
その人は食堂のドアを無遠慮に開けて俺達が意味の分からない単語を撒き散らした。
彼、もしか彼女が日本らしくない大きなモーションを繰り返す度、光さえ飲み込みそうな黒が強かに揺れる。
それはまるで、あの絵心の髪のような。
「Bild?"Sae"?
Ich habe dich vermisst~!」
「おい、今冴っつったか」
「Ja!」
サエ。
そう叫んで彼(彼女)は凛に抱きついた。
…まぁ、十中八九糸師冴の事だろう。あいつは顔だけなら糸師冴によく似ているから。ブルーロックに居て、凛と話している俺達は、凛に冴の話を振ると怒ることが分かっているから暗黙のタブーなのに。こういう人こういう人ってやっぱ凄いんだな…
「Aber Sae...
hast du deine Haare gefärbt?
Du hast auch deine Frisur geändert.
geändert?
Es steht mir gut...aber ich kann mich nicht daran gewöhnen. komisches Gefühl.」
「何言ってんのか分かんないけどなんか凛と糸師冴を比べてんのかな…?」
「諦めよ〜よ潔…俺達には分かんないって 。」
「いや、リスニングの成果をここで見せようと…」
「大体の奴らは諦めてるよ、潔」
「えぇ…」
「そもそもあれ、ドイツ語でしょ?」
「えっ!?英語じゃないの?」
「Jaって、言ってたくない?あれ、ドイツ語じゃなかった〜?」
「どっちにしろ分かんないよ。」
「Oh ja ...
Moment mal, ich erinnerehole mal etwas Japanisch heraus.」
「ご、ごめんね…ずっと日本語話していなかったから、変かもしれないんだけど。ジン…甚八。絵心甚八はここに、いる?」
「「「いや喋れるんかい!!!」」」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。