ふと、この間の俺はこれから来る想い人との会話を思い出した。
遡ること、テウセルがスネージナヤに帰り、数日がたったある日、あなたの長い漆黒の髪はサイドテールにされていた。
テキトーに一つにまとめていた髪型とは大違いだ。
彼はそのサイドテールを大きく揺らしながら、璃月の街を歩いていた。
遡ること、テウセル帰国後、あなたは、座って本を読んでいた。
下ろされた長い黒髪を見て、ふと、触れたくなった。
彼の髪を一房掬う。
その一連の動作に気づいたのか、信じられないほどの速度でこちらに振り返る。
信じられない。そんなセリフが顔に書いてある。
俺も、その勢いに気圧されながらも、答える。
そのまま、髪に唇を落とす。
彼は驚いたように瞠目し、顔を赤く染め上げた。
珍しく上目遣いを使い、オネダリする。
彼は、俺の声と顔には弱い。
あなたは、小さく絆されたなと呟き、ため息をついていた。
そこから、俺の髪を整え係は始まった。
来るのを待っていた想い人は、パッと現れて、サッとさりげなく会話に入り込んだ。
そうして、タルタリヤとあなたの同化作戦は本格的にスタートしたのであった。
To be continued……
なう(2023/10/02 23:32:02)
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!