毎日の日課のようなやりとり。男子バレー部にはもう呆れられている。
事の発端は入学してすぐの日だった
バレーボールを見るのが大好きで、幼馴染の賢二郎がずっとやってるのを見てきたから、必死に勉強して、白鳥沢学園に入学した。そして、晴れてバレーボール部のマネージャーになった。
初めて見た彼のブロックに惚れた
練習終わりに声をかけてみたのが全ての始まり。
これが記念すべき初会話
それから毎日毎日毎日彼のブロックを目で追いかけて一ヶ月が経った。まだ2年生だった天童先輩は牛島先輩と一緒にレギュラーをとった。
いつもの帰り道、明日から大会が始まる大事な時。冗談っぽく言ってきた天童先輩の言葉がすとんと胸に落ちた。
家の方向がギリギリまで同じだから一緒に帰れるだけで幸せで、心がこんなに満たされる。あ、好きなんだ。私は天童先輩のことが。
いつもより少しトーンの落ちた声でいつもより早めに一緒にいることを切り上げた。
そのままゆっくり歩き出して隣に賢二郎が並ぶ
逃げるように家に入る。親はいつも夜まで帰ってこない。電気の付いてない部屋の中で、1人、深呼吸する。
どこに向かうわけでもない音が1人宙を彷徨って消えた。
次の日の試合天童先輩は絶好調だった。
荷物を取りに行って戻ってきた先輩と一緒に帰り道を歩く。賢二郎は牛島先輩を家まで送るそうだ。
そうして曲がり角を曲がった先に牛島先輩を送り届けた賢二郎がいた。
これが私の日課の始まり
次の日の練習
逃げるように牛島先輩に走っていった天童先輩。これから長期戦になりそうな予感。
それから1年が経った
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。