_________そして、翌朝。
あるデパートの広場で、【町の安全秋まつり】とかかれたポスターの前で、計12名がチアダンスを踊っていた。
パチパチパチ、と拍手が舞うその片隅に、立てかけた旗の後ろには神崎たち3人が隠れていた。
_________すると、あなたが突如何かに気付いたようだった。
神崎と黒木の肩を叩く。
2人があなたの示す方向へ視線を向けると、長いスカートを履いてサングラスをかけてマスクをつけた、女性が前へ進んでいる姿。
末長や木村、諸星もそれに気づいた様子。
黒木は諸星に言った。
女性は、人だかりの後ろをすーっと通り過ぎていく。
あなたたちはゆっくり旗の後ろから姿を現した。
顔はめパネルの後ろにいた諸星は、女性を見据えながらゆっくりした足取りをしている。
そんなことは気に留めず、女性はいくつもあるロッカーのところへ向かい、ひとつのロッカーの前へ立った。
女性はロッカーを開けた。
諸星は女性に近づく。
女性はロッカーに両手を突っ込んだまま諸星の顔を見つめている。
諸星はスーツの内ポケットから警察手帳を取り出した。
次の瞬間、女性はカチャリと諸星に拳銃を構えた。
驚きに思わず諸星が両手をあげると、女性は諸星を突き飛ばして群衆へ拳銃を向けた。
末長と木村を筆頭に、神崎とあなた、黒木も拳銃を女性へ向ける。
しかし、女性は勢いのある足取りのまま止まらない。
すると、何人もの隠れていた警察官が出てきて、女性に銃を構えた。
二階から階段を使い降りてきた野島管理官たち。
どこかからか出てきたガタイのいい私服の警察官たち。
何十人もの人々が女性の周りを取り囲んだ。
女性の拳銃の矛先は、神崎たちに向いたまま。
微動だにしない。
すると次の瞬間_________
澤登が突然拳銃を構えた。
咄嗟に神崎とあなたが澤登を突き飛ばすと、発砲された弾が天井へ向かって放たれた。
倒れ込んだ澤登に、神崎が見下ろして怒鳴った。
すると、黒木が倒れている澤登に近づいていく。
黒木は澤登を見下ろし、拾った拳銃を内ポケットにしまいながら言った。
次に、神崎、あなた、黒木が視線を合わせる。
黒木は女性の方を振り向き、指示した。
その声を皮切りに、女性は徐々に澤登に近づいていく。
そして澤登に銃口を向け、引き金を思い切り引くと_________
ビチャッッ_________
しかし放たれたのは、弾ではなくただの水。
澤登が濡れた顔を拭い、何事かと目を見開いたそのとき、その女性がパサリとウィッグとサングラス、マスクを外した。
そこから現した顔は__________________
眉をしかめた、彩乃だった。
澤登はびっくりしたような顔。
その場にいた全員、眉をぴくりと動かして澤登を見る。
神崎は冷静な声を出した。
澤登は上体を起こす。
どういうことかと黒木の顔を見上げる澤登に、あなたは口を開いた。
神崎はそれに続けた。
その場にいた全員が、鋭い視線を澤登に向ける。
黒木は口を開いた。
それに続き、神崎とあなたも口を開く。
...澤登は、なぜか笑っていた。
首をふるふる横にふり、弧を描いた口元を開いた。
立ち上がり、弁解しようと試みた澤登の顔が再び真顔へ変わり、黒木を驚いた瞳で見た。
澤登の片眉がほんの少し動いた。
刹那、澤登が慌て始め、体も顔をも震えだし、声を張り上げた。
すっかり我を失い、怒鳴り散らし始めた澤登。
黒木は冷静に内ポケットからあの写真を取り出し、それを澤登に見せた。
黒木は、折られた写真のもう一面をぴらりとめくる。
それを見た、澤登の表情がこわばった。
何故ならそこには_________
_________澤登が写っていたからだ。
澤登の顔が、途端にあちゃー、というような顔に変わる。
すると___________________________
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。