重いリュックを背負いながら、家路をたどる。
私の家は学区内ではあるものの、学校から
遠く、最寄り駅まで電車を使った方が効率が良い。
だが学校で定められているので、歩いて
通学している。
午後18時過ぎ。今日は塾がないので家に
まっすぐ帰っている。
父は公務員。母は会社員で在宅勤務。
そして一人暮らししている大学生の兄の
4人家族だ。
今日の料理は私の大好きなシチューだ。
母が奮発して美味しい具材を買ってきてくれた
みたいだ。
母が微笑みながら話す。
にこやかな母に私も思わず微笑んで返事をする。
父が上機嫌に帰ってきた。
私が父に笑顔で話しかける。
結局みんなで一緒に夕飯を作る。
とても幸せだけど、どこか物足りないような。
当たり前の日常。
後日
突然右納が深刻な眼差しでこちらを見つめる。
その真面目な表情に驚き、思わず固まってしまう。
それは環も同じようだった。
右納が何やら深刻なおもむきでスマホの記事を
見せてくる。
この学校は校則が厳しいが、何故かスマホの
所持は許されている。
それがとてもありがたい。
そこには、人をゾンビに変えてしまう未知の
ウイルスの存在について書かれていた。
感染者の体液が人の体内に入る事で感染すると
考えられているが、詳しい感染経路や感染源、
治し方は不明らしい。
感染した人はゾンビになり、理性を失って
人を傷つけたり暴れたりしてしまう。
傷をつけてもすぐに戻り、今のところ、
脳か心臓を破壊する以外に止める方法は
見つかっていないようだ。
私たちは教室がいつもとは比にならないくらい
騒がしくなっていることに気づいた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。