あなたside
兎に角走った。
医療室で考えていた。
若し太宰さんが居なくなってしまったら。
その答えが今先刻出た。
その前に、太宰さんが居なくなる前に、
私が消えてしまえば……そうすれば………
私は幸せなまま生涯を終わらせることが出来る。
太宰さんに愛されたまま、生きていることを疑わず
幸せに……幸せにすべて終えられる。
太宰side
いくら探してもあなたが見つからない。
あなたが行きそうな場所。
あなたに思い入れのある場所……
いくら考えても、どれだけ片っ端から探しても
あなたが何処にいるのか全く判らない……
……否、ひとつ心当たりが…
しかし…否、………
私は自分の考えを疑いつつ、その場所へ向かった。
あなたを監禁していた場所へ……
戻ってきた。
建物の扉を開けると、
玄関にあなたの靴が置いてあった。
最初は信じられなかった。
だがそんな予感がした。
ひとつだけ気になっているのは
此処が異様に静かなこと。
あなたを監禁していた部屋の扉を開けようとした。
しかし、扉は開かなかった。
鍵は開いている筈。
扉が開くのを遮っているもの……
何かが扉に重石になって………
私は少し無理やり扉を開けた。
すると、何かがドサッという音を立てて倒れた。
ドサッと倒れた何か。それはあなただった。
扉のドアノブにあなたを縛っていた鎖をくくりつけて、首を吊っていた。
あなたを抱える。
躰が軽い。もう息をしていないのが判る。
少し離れた場所に、
一枚の紙が置いてあるのを見つけた。
その紙にはあなたの字でこう書かれていた。
「私を愛してくれてありがとう
置いていってしまってごめんなさい」…と。
だから……
太宰さん、もう元には戻れないんですよ。
完結
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。