太宰が目を覚ましたときにはその部屋に誰もいなかった。
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私は監禁部屋を出てから取り敢えず走った。
走って、走って、太宰さんから逃げることだけを考えて。
これからどうしよう。行く宛もない。
私はもう…探偵社員でもない。
私は長く感じた監禁の疲れと太宰さんから逃げられたことの安堵もあり、近くのベンチで眠りについてしまった。
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目が覚めるとそこにはすでに太宰さんがいた。
…しまった!
でもまだ外…監禁部屋じゃない。
私はそう思うと同時に勢いよく走り出そうとした。
逃げれば勝ち…!
でも現実はそれも叶わず…
いつの間にか私は太宰さんにバックハグをされていた。
彼は私の耳元で、静かに、冷静に、私に話した。
私はそれを受け入れたくなかった。
だって、受け入れてしまったら、、、
永遠に太宰さんと居る他に道はないということになってしまうから。
困惑で頭が回らなくなった私を連れていくのは簡単なことなんだろう。
自分の事ながら、他人事のようにさえ思えてしまった。
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私の目の前に置かれたのは二つの輪。太宰さんはまず一つを取り私の目を見た。
目があったときにみた彼の目は本当に、私への独占欲を物語っているかのようだった。
でもこれをつけたらもう逃げられなくなる気がした。
私は壁に追い詰められながらも、迫ってくる太宰さんを追い払おうとした。
太宰さんはそんな私の腕をひょいっと引っ張って手枷をつけた。
足枷も同じように。
それは…あまりにも怖い言葉だった。
体が震えてくるのには十分すぎるくらいの理由になった。
私は息を飲んだ。一つ目にあんなのがきたら身構えるしかない。
どういうこと…理解が追い付かない……
私は思わず手枷を触った。なぜ触ったのかはわからないけれど、太宰さんの言葉を聞いたのと同時に反射で触っていた。
私は一時の安堵と引き換えに、永遠の檻にいることとなった。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。