高鳴る鼓動を抑え、一曲踊り終わると今までかいたことのない量の汗をかいていた。
隣で踊る先輩は、本当に輝いていて。
…いや、いつも先輩は輝いているんだけど。こんな至近距離で見て、感じたのは初めてで。
先輩に近付けば近付くほど違う世界の人なんだって感じてしまう。
…寂しい。先輩にもっと近付きたい。もっと近い存在になりたい。
ふと、この前梨咲が言っていた言葉が頭の中で再生される。
好き…か。
そんなの、分かんないよ。
人を好きになったことなんて、記憶にない。
どれが好きって感情なのか、分からない。
でももし、
特別な存在になりたいという願望が、
近くにいたいっていう欲望が、
良く思われたいっていう切望が、
好きというものになるのなら。
私はきっと……
この、優しくて、かっこいいけどたまに可愛くて、輝いてる先輩が……
好き、なんだ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。