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エマがあの鬼との約束を履行した。
金色の水がより一層眩しく輝いて、私達の顔を下から照らした。
そして次の瞬間___
視界が途切れた。
目を開けると其処には、一面に広がる緑。
でも、鬼の世界より木が小さい。変な生物もいない。
後ろを振り向いて、エマに声をかけた。
一番喜んでいるのは、エマのはずだ。
嘘だ。
嘘だ。
さっきまで、隣に居たんだ。
なのに
私の大馬鹿野郎。
如何して。
如何して気づけなかった。
可笑しいと思っていたのに...!
ノーマンは膝から崩れ落ち、レイは顔を大きくゆがめた。
皆の喜びは一瞬で消え失せた。
エマが...エマが居ないと意味がない。
此処まで引っ張ってきてくれたエマが居ないと。
泣き叫ぶ皆の声の先から聞こえた、唸り声。
私の一声に皆は戦闘態勢をとった。
小さい子は怯えている。
はっ...本当に泣きっ面に蜂状態だ。
でも…相手は蜂ではない。
多分...猪や熊か…?
銃はあるが、なるべく使いたくないな…
のろのろと対処法を考えていたら...もうこんなに近くに...!
あれはもう…こちらを、獲物として認識している。
一応、銃を構えて唸り声の主に近づいた。
熊だ。
大きく深呼吸をして...
その熊と目をそっと合わした。
目をそらした方が負けだ。
熊は自分より強い奴には挑まない。
1分ぐらい見つめ合ったのち、
固まっていた熊は私に背を向け森に帰えった。
私の勝ちを確信し、皆の方に振る返ろうとした。
でも、その時
矢が空気を切って此方に来る音がした。
こんな時代に矢という事は、
文明が低い所に転移してしまったか?
少し、ネガティブな考えが頭をよぎる。
だけど、そんな事を考えながらも、身を守るため近くにあった石ころを、いいタイミングで矢に当て付け落とした。
急いで、矢が来た方向を振り向き人影を探したが、誰も見つからない。
逃げたな。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。