「うーん………」
「なんか、違うような……。フリフリしすぎ……?浦田くんどんな服かな……?」
ただ今、デート服総選挙中…………
「あなた……デートか…?!一体誰と……。あ、悠くん?!」
「ちょ、お父さんやめなさいよ。あなたに嫌われるわよ……。」
「………」
さかのぼること2週間前。
プールに落ちたあの日。
あの後すぐに体操服に着替え、浦田くんに家まで送ってもらった。
『………桧山、期末終わったら2人でどっか行かね?』
『え、』
『で、その日返事聞かせて』
浦田くん……。
真剣だ。
本気、なんだ。
『…わかった。』
「…………」
いい加減、ハッキリしなきゃダメだ。
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待ち合わせは10時。
今は9時半。
待ち合わせより早く着きそう………。
腕時計を見ながら、駅前を歩いていた。
すると、いきなり右手を誰かに掴まれた。
「あなたっ、浦田センパイと会うん?」
「悠……!ど、どうしてここに居るの?」
「たまたまこの近くで遊んでたら、あなた見かけて……」
………悠には関係ないでしょ?
「……どうしてそんなこと聞くの?」
「ヤダ。だめ。」
…………ホントは言いたくないけどさ、私悲しいの。気づいてるの。
「……ゆ、悠が、浦田くんに私を取られたくないのは……。
…………わたしがお母さんみたいだからじゃないの」
………………。
ゆっくりと顔をあげる。
すると、悠は驚いた顔をしてした。
そして、ゆっくり掴んでいた私の右手を離した。
それが…。
それがすごく傷ついた。
「…ほら、やっぱりそういうことなんでしょっ……!」
何も言い返して来ないんだ。
早くこの場から居なくなりたくて、踵を返し早足で駅から遠ざかるように歩いた。
悔しくって、悲しくって……。
もう最悪だよ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!