第24話

24.Tiramisu#6
14
2024/02/04 13:36
いつも読んでくださってありがとうございます。
また少しお知らせさせてください。
今回は三枝さんとナキのお話です。
それでは甘くて遠回りな本編をお楽しみください。
失礼します。
【横田波瑠】
気がついて目を開けた。鈍い頭痛に顔を顰める。
思考も視界もはっきりしないまま、落ち着きたい私とは裏腹に息を荒げる体。
横田波瑠
は、はぁ、みず、……っ
いつも寝る前にサイドテーブルに用意しているはずのタンブラーに手を伸ばす。が、私の手は空を切った。
用意しなかったっけ?
あれ、そもそも私、いつ帰ってきた?どうやって寝た?
カフェから帰ってきた記憶がない。
髪はギシギシ。体もベタベタ。でもメイクは落としてあるし、服はいつものルームウェア。
横田波瑠
いたい、……きもちわるい、
体を起こそうと試みたけど頭がぐわんぐわんと揺れてベッドに引き戻された。
横田波瑠
は、……はぁー、っ
あ、これダメかも。
須崎真衣
波瑠さん、また起きちゃいました?
ぼやっと須崎が見える気がする。夢?
横田波瑠
すざき、っはぁ、……ふー、
夢にしては体の辛さが尋常じゃないけど。
須崎真衣
無理に喋らなくていいですよ。何か必要なものがあれば持ってきますけど
横田波瑠
みず、ちょうだい
いや、きっと夢。須崎が家にいるなんて。
夢なんだから少しくらい甘えたっていいわよね?
須崎真衣
わかりました。持ってきますね
横田波瑠
ふぅー、は、ぁ、
息を吐いたところで辛さが和らぐわけでもないのだけど、どうにかしてこの体に篭った熱を吐き出してしまいたかった。
須崎真衣
波瑠さん、お水です。飲んだらしっかり寝てください。では、
横田波瑠
まって、
気がつけば須崎を呼び止めていた。
そう、夢なんだから。
横田波瑠
ねるまででいいから、ここにいて
須崎真衣
……はい、わかりました。ここでいいですか?
横田波瑠
ん、かわいい
思ったより素直に感情が出てびっくりした。現実で出ちゃわないように気をつけないと。
でも、どうせ夢なら好きだと伝えられたら良かったのに。それだけは言えないみたいだった。
夢から覚めて、体を起こすと汗で濡れたルームウェアが肌に張り付いていた。静かな部屋で布団が擦れる音だけがやけに響いている。
どうやら体調悪くて倒れてしまったのは夢じゃなかったらしい。
多少頭が痛いものの、起き上がれるし息も荒れてない。
水を飲もうとサイドテーブルにあるコップを取って残っていた水を飲み干す。
カーテンを開けると光が差し込んだ。
横田波瑠
ぇ、何時……あ、七時か
バスの時間は七時四十分。出勤は八時。起きるにはちょうどいい時間。
シャワー浴びて髪乾かして、いつも通り下の方で結んでくるりんぱ。まだ本調子ではないから朝食はいらない。
プルルルル……プルルルル……
横田波瑠
はい、
中野蒼弥
<今日来れるのか?無理して来なくていいから
横田波瑠
行くわよ?完全に治ってるもの
中野蒼弥
<そうか。あ、とーかから受け取った合鍵が多分ポストに入ってるから持ってきてくれ
横田波瑠
とーか?今実家にいるんじゃないの?
中野蒼弥
<昨日横田が倒れる少し前に電話がかかってきて、横田が体調崩すだろうからって合鍵の場所教えてもらったんだ
合鍵なら奏多の家の中のはず。とすると、三枝が持っている奏多の家の合鍵を使わなきゃいけない。
横田波瑠
……三枝は嫌な顔してた?
三枝が愛してやまない奏多の家に私の家の合鍵があると知ったらいい気はしないだろう。
中野蒼弥
<いや、まあ。でも須崎と相田が顔真っ青にしてたからそれどころじゃなかったな
横田波瑠
ごめんなさい、迷惑かけて
須崎真衣
<波瑠さん!大丈夫なんですか、ちゃんと休めましたか!
電話口の声色が変わる。夢で聞いた落ち着いた須崎じゃなくて、切羽詰まったような苦しそうな声。
横田波瑠
大丈夫よ。ありがとう
夢の中で須崎に介抱されてたなんて言えないけど。
横田波瑠
じゃあ、そろそろ家出るから
中野蒼弥
<ゆっくりでいいから、無理するなよ
横田波瑠
わかってる
ポストに入っていた合鍵を回収して、私は家を出た。

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