僕は走った。
太陽のように輝く髪を。
まばゆく光が飛び散る世界を。
青空によく似合うキミの髪を。
ハーフなのか…?
日本人とは思えないほど綺麗な顔立ちをしている。
突然あかりがナナに抱きつく。
僕はケッシンする。
僕はあかりを突き飛ばし、ナナの手を掴む。
僕は馬鹿みたいな顔をしている2人に見向きもせず、ナナを引っ張る。
なにも考えずに、体育館裏まで走ってしまった。
あのとき、ナナの姿とソラの姿が重なった。
ここで僕が助けなかったら、また僕のせいで死んでしまうのではないかと思ってしまった。
もう、後悔はしたくない。
ナナは吐き捨てるようにそういった。
もしかして、ソラもそうだったのかもしれない。
僕からみたら、ソラは完璧な人間だった。
でも、実は、
ソラも周りの人間と変わらなかったのかもしれない。
周りからすごいと言われれば言われるほど、完璧じゃない自分が、すごく惨めに見えていたのかもしれない。
周りの人に見せる完璧な自分と誰にもみせない完璧じゃない自分。
完璧じゃない自分にとって、すごいという言葉は刃物だったのかもしれない。
完璧な自分が完璧じゃない自分を「すごいという名の刃物」で刺していたのかもしれない。
僕は、ナナの手を握る。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。