第2話

淡い茶色のネクロマンサーは。
98
2024/04/19 06:00

門下 伊江もんか いえ。その辺にいる高校生。
門下 伊江
ゲームしよ…。
勉強もソコソコ出来る。ハズ。うん。
ゲームが好き。







そう、この時までは、普通の高校生だった。



フッ
部屋に風が入ってくる。
門下 伊江
あれ…、窓開けてたっけ…。
目の前にある窓からは、紅色の街並みが見えた。
空の紅色が、葵色のカーテンに移る。

不意にも、綺麗だと思ってしまう。
門下 伊江
綺麗…。
声にも、出る程に。


その時だった。彼女が現れたのは。
門下 伊江
っ!?
窓から見える、街並みよりも近く…、ベランダに、俺と同じぐらいの年齢の少女が立っていた。
門下 伊江
いや、俺の部屋には、ベランダなんて───、
こんにちは、え〜と、




門下 伊江さん?
門下 伊江
え、なんで俺の名前を…、
なんでって…、私はネクロマンサーなので。
門下 伊江
ネクロマンサー…?
ネクロマンサー…、確か、死を操る者。

うろ覚えだが。ネクロマンサー。
物語の中でしか、聞いたことがない。

…だが、目の前の少女は確かに、宙に浮いている。

しかも、周りには人魂の様なものも。

服装もなんだか、奇妙だし…。
ほら、私浮いてますから!不法侵入者じゃないです!
と、黒髪ロングの少女が言う。

…不法侵入なのは変わらないと思うが。
それに、ネクロマンサーの証拠で頭に骸骨?なんですかね…、これ?付けてるんで!
門下 伊江
何故、疑問形…?
まぁまぁ…。そんなことは置いといて!
門下 伊江
貴方、誰なんですか…?
あ〜!忘れてました!w
てか、なんで俺、こんな奴とマトモに会話出来てるんだろう…。
私は、見習いネクロマンサー、







めめんともり
めめんともりです!
門下 伊江
メメントモリ…?
めめんともり
平仮名で、めめんともりです!
門下 伊江
んで、そのめめんともりさんは何してるんですか…。
めめんともり
私達、ネクロマンサーは人の死を取って、操ることが唯一の楽しみ…、
めめんともり
じゃなくて、仕事なんです!
門下 伊江
楽しみ…。
…人の死を…、って、
門下 伊江
俺、もうスグ死ぬの…?
えぇ…?

でも、めめんともりさんの言葉、なんか信用出来る気が…。

いやいや、人を騙すのが得意なだけかもしれないし…。
めめんともり
あ、そうです、そうです!
めめんともり
貴方、門下 伊江さんでしょ?
門下 伊江
はい、そうですけど…。
めめんともり
それなら、合ってます!
門下 伊江
え…。
門下 伊江
因みに、死ぬのって何時ぐらいで…?
めめんともり
私は見習いなので時間はまだまだあります!
めめんともり
ざっと…一年ぐらいですかね?
門下 伊江
一…年…。
めめんともり
まぁ、それまで精々頑張って生きてください!w
めめんともり
場合によっては、死なないかもですけどねぇ…。
門下 伊江
え、死なない…って…?
めめんともり
あ、はい!担当のネクロマンサーに、“生きてるという素晴らしさ”…?を認めてもらったら、生きれるみたいですよ!
門下 伊江
…なんか、面倒臭いな…。
めめんともり
ってことで、生きたいなら、精々頑張ってくださいね!w
なんなんだよ…、いきなり死ぬ…って…。
しかもちゃんと煽ってくるし…。
めめんともり
あ、因みに死因はですねぇ…。
門下 伊江
事故とかじゃないですか?
めめんともり
え〜と、予想がそれですね?
めめんともり
んで、正解が…、




めめんともり
“自殺”ですね!
にっこにこの笑顔で、彼女が言う。
門下 伊江
自…殺…?
めめんともり
自殺なんですね〜!w
彼女からは、本当にタダ面白い話なのかもしれない。

でも、俺からすると、本当に大変な事に…。
めめんともり
自殺だと防がれる可能性があるので、難しいらしいんですよねぇ…。
門下 伊江
じ、自殺の理由…って…っ、
めめんともり
えぇ…、そんなの書いてませんよ。
彼女は何時の間にか、カルテ?の様な物を取り出して言う。
門下 伊江
そう…ですか…。
自殺の理由なんて、沢山ある。

いじめ、虐待、生きてることに対する疲れ…。

門下 伊江
防ぎようがない…?
沢山の可能性がある。

つまり、沢山の対策を考えなければいけない。



門下 伊江
…成程な…。
めめんともり
ん?どうしたんですか?
門下 伊江
つまり、貴方に“生きてるという素晴らしさ”を伝えれば…、




門下 伊江
俺は、生きていられる…ってことか。



めめんともり
ふぅん…。そっちを狙いますか。
めめんともり
…是非、頑張ってくださいね?
彼女はにこりと不敵な笑みを浮かべて、地面に落ちていく。
門下 伊江
地面を見た時には、



彼女はもう、いなかった。






そして、貴方と俺の物語の序章が、今、幕を開けた。

プリ小説オーディオドラマ