「おーはよっ!」
「わっ、七海っ…おはよ〜」
教室で席についていたところ、後ろから抱きついてくる七海に驚く。
「…はよ。」
そして、教室に入ってきたのは、にじ。
ドキッ。
そうだ、そういえば…私昨日、にじに告白されたんだ…。
「お、おはよ…」
どうしよう、昨日の状況が鮮明に蘇る。
私たちはどんな会話をするわけでもなく、にじは自分の席の方へ。
「…なんかあった??」
七海が不審げに聞く。
う…。
相談していいことなのかな…。
にじの気持ちを、簡単に人に教えていいものなのかな…。
「あなた…?」
七海の心配そうな表情。
っ…。
やっぱり、言っといた方がいいのかな…。
いろいろ、協力してくれてるわけだし…。
「な、七海、ちょっと来て…。」
私は七海を教室から出るように促し、裏庭に向かった。
「…こんな所まで来て話すことなの?」
…まぁ、人に聞かれちゃにじに悪い。
「あ、あのね、こ、虹太くんに…告白されたの。」
「えぇ!?」
七海が後ろに倒れそうになるくらい驚く。
「いつ!?」
「昨日の放課後…」
「んで、あなたはもちろんオッケー?」
胸がチクッとした。
私は七海ににじを好きって言ってたから…。
実際、そう思ってたし…。
「ううん、振っちゃった…。」
「…そっか。」
「へっ!?」
…なにその薄いリアクション。
私が逆に驚いてしまう。
「で?
なんで振ったの?」
うぅ…。
それは…。
言おうとして、恥ずかしくなる。
「…ゆ、悠貴のこと…好きって…気づいちゃったの…。」
かぁぁっと顔が熱くなった。
「ふっ…」
七海が微笑する。
??
そして次の瞬間、手が向かってきたかと思うと髪をワシャワシャされた。
「えぇぇぇぇぇ!?
ちょ、七海!?」
いきなり何!?
「やっと気づいたか、バカヤローッ!!」
へ!?
「やっと、って!?
気づいた、って!?」
全くわけがわからない。
「あははっ、私は分かってたよ?
あなたが悠貴くんを好きなこと。」
「え!?」
なにそれ、私より先に私の好きな人知ってるって何!?
「あなた、割と悠貴くんに視線送ってるなーって思ってたし、悠貴くんが三空と話してたり私が三空のこと応援してたりすると顔が曇ってたし…」
「え!」
そうだったの!?
無意識!
「まぁ大変なのはこれからだよね」
「?」
大変?
なにが?
私のポカンとした表情に、七海が説明を加えてくれる。
「だって、最終決定権は悠貴くんにある訳だし?」
「?」
「つまり、あなたと三空、どっちがカノジョになれるかってこと!」
「!」
カノジョ…。
そっか…
そんなこと、全然考えてなかった…。
いや、悠貴の好きな人誰だろうとは思ったけど、私がカノジョになれるかどうかなんて…。
「…それ、三空の方が可能性充分じゃない??
だって私…幼なじみだよ!?」
恋愛対象に見られてる気がしない…。
「んー、それはどうかな。
あなたが悠貴くんを好きになったように、幼なじみからでも恋愛感情は生まれるでしょ。」
…そぉかぁなぁ。
ヤバい、すごい不安になってきた…。
「んで、告白しないの?」
「!?」
告白…?
私が…?
「ほら、早くしないと三空が先に言っちゃうかもよ?」
「そっか…」
告白かぁ…。
ドキドキ、と私の胸が今までにないくらい緊張している。
「あなた!
当たって砕けろだよ!!」
「…砕ける前提!?」
やっぱり悠貴は三空のこと…??
ズシッと心が重くなる。
「ウソウソっ!」
…なんだ…。
心臓に悪いよ…。
「よしっ、私、木曜日に告白してみる!」
文化祭が始まっちゃう前に、伝えたい。
悠貴、どう思うかな?
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!