既読のついてない柊真とのトーク画面。
私が朝送信したっきりの状態。
スマホの時計は6時10分を指していた。
今は部活中だろーな。
だけど、絶対未読無視。
だって、お昼にTwitterを開いたら、ツイートしてたし…
もー、返信してよ…急ぎの内容じゃないけどさ…
…こういうのを束縛って言うの?
私、ウザイ?
重い?
「あはははっ!
もーっ!」
「…。」
隣のお姉ちゃんの部屋から大きなお姉ちゃんの笑い声。
あーイチャついてるなぁっ。
素直に認めますよ、羨ましーですよ。
正直言って、私たちは上手くいってないんだと思う。
多分柊真もそれを分かってる。
だからこそ、何も言わない。
ケンカして別れるのを恐れて、本心を見せない。
自分の本音を明かして、引かれたくない。
面倒って思われたくない。
柊真のこと、時々遠く感じるの。
柊真もきっと、私に隠してることがある。
何でもかんでも言え、とは言わないけど隠し事はして欲しくないよ。
他の人を好きになったのなら言って。
してほしい事があったら言って。
相談があるならしてよ。
私彼女だよ?
柊真は私に弱いとこを見せない。
そんなに私頼りないかな?
はぁ。
〜♪
手に持っていたスマホが振動して通話通知画面になる。
「えっ」
柊真?
私の胸が高鳴る。
私は恐る恐るスマホを耳に当てた。
「も、もしもし…」
《あ、出た》
あ、出たって…出るよそりゃ!
「どーしたの?
部活は?」
《今日早く終わったんだよ。
だから、一緒に帰ろーかなぁと…。
まだ学校にいる…?》
ドキッ。
柊真、一緒に帰ろって言ってくれてる…。
嬉しいっ!!
でも…
「ごめんっ、もう家なんだー…」
《そっか…》
気落ちした声を漏らす柊真。
「ほんと、ごめんねっ?」
柊真の部活が早く終わるって分かってたら30分くらい学校で待ってたのになぁ…。
《いや、大丈夫。
んじゃ。》
「うんっ…」
電話が切れる。
「ふふっ…」
少し話しただけなのに、一緒に帰れるか聞かれただけなのに、今までの不安がすぅーっと消えていく。
声を聞くだけで落ち着く。
柊真はちゃんと私のことを想ってくれてるじゃん。
一緒に帰りたい、一緒にいたいって思ってくれてるじゃん。
やっぱ、“もっとこうして欲しい”なんて思ったら私、欲張りだよね。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!