第10話

初めての感覚
1,002
2017/12/08 12:41
「やっぱさー、遠距離には限界があるんかなー…」


「へぇー、遠距離だったんだ…」


「うん、高校入る時に、向こうが親の仕事の関係とかなんとかで、引っ越すことになってさ。」


「へぇ…」


遠距離、って大変なんだろーなぁ…


私も柊真と離れることになったら…


無理、考えられない。


会えるのってどのくらいのペース?


1ヶ月に1回とか?


無理無理無理っ!


「…あなた、聞きたいとか言ってるけど実は興味ねーだろ…」


「へっ?」


雄太が呆れ顔をする。


私が、興味ない…?


「そんなことないよっ!?」


「だってー、“へぇー”だけじゃーんっ。」


頬を膨らませて言う雄太が少しだけ可愛い。


…別に、変な意味じゃないよ?


「えっ、いや、それは…私だったら遠距離絶対無理だなぁって、考えたの。

ホント、雄太のこと尊敬する。」


私がそう言うと雄太の顔はみるみるうちに赤くなっていった。


「え、え、」


「あははっ、何照れてんのっ。」


別に照れるとこじゃないと思うんだけど…


「えっ、いや…素直に褒められたから…驚いて…」


手でパタパタと仰ぐ。


どんだけよ。


尊敬するって言っただけなのに…。


「でも、そういうあなたの人を褒められるのっていい所だよな。」


「えっ…」


私の顔が少しだけ熱くなる。


「ほら、褒められると照れるだろー?」


ふっとドヤ顔で笑う雄太。


「なーんだ、照れさせるために言っただけか。」


ホントの褒め言葉じゃないって訳ね。


「ちげーしっ、ほんとに思ってるって!」


「ふふ、そりゃどーもっ。」


雄太とこんなに話したの初めて。


凄く表情豊かなんだなぁ…。


深刻そうな顔をしたかと思ったら大げさに笑ったり、真面目になったり呆れたり、照れ顔を見せたり…。


表情がコロコロ変わっていく。


「おはよぉーっ

あ、あなたじゃんっ!

え、早くない?」


ガラガラッと扉が開いたかと思いその方を向くと、クラスメートで友達の浅加奈実(あさかなみ)が入ってきた。


「あははっ

おはよー、雄太と同じ反応!

今日早起きしちゃってさ〜」


奈実をきっかけに雄太との会話は終了し、私は奈実がこの前行ったというとっても美味しいパンケーキ屋さんについて、ショートホームルームが始まるまで話し続けていた。


雄太も登校してきた男子数人と笑いあっていた。


その間、1回だけ雄太と目が合って、お互い、なにかの合図のように微笑んで、またそれぞれ元の話を続けた。


なんか、不思議な感覚。


今までにない感覚。


心がふわっとする感覚。

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