「やっぱさー、遠距離には限界があるんかなー…」
「へぇー、遠距離だったんだ…」
「うん、高校入る時に、向こうが親の仕事の関係とかなんとかで、引っ越すことになってさ。」
「へぇ…」
遠距離、って大変なんだろーなぁ…
私も柊真と離れることになったら…
無理、考えられない。
会えるのってどのくらいのペース?
1ヶ月に1回とか?
無理無理無理っ!
「…あなた、聞きたいとか言ってるけど実は興味ねーだろ…」
「へっ?」
雄太が呆れ顔をする。
私が、興味ない…?
「そんなことないよっ!?」
「だってー、“へぇー”だけじゃーんっ。」
頬を膨らませて言う雄太が少しだけ可愛い。
…別に、変な意味じゃないよ?
「えっ、いや、それは…私だったら遠距離絶対無理だなぁって、考えたの。
ホント、雄太のこと尊敬する。」
私がそう言うと雄太の顔はみるみるうちに赤くなっていった。
「え、え、」
「あははっ、何照れてんのっ。」
別に照れるとこじゃないと思うんだけど…
「えっ、いや…素直に褒められたから…驚いて…」
手でパタパタと仰ぐ。
どんだけよ。
尊敬するって言っただけなのに…。
「でも、そういうあなたの人を褒められるのっていい所だよな。」
「えっ…」
私の顔が少しだけ熱くなる。
「ほら、褒められると照れるだろー?」
ふっとドヤ顔で笑う雄太。
「なーんだ、照れさせるために言っただけか。」
ホントの褒め言葉じゃないって訳ね。
「ちげーしっ、ほんとに思ってるって!」
「ふふ、そりゃどーもっ。」
雄太とこんなに話したの初めて。
凄く表情豊かなんだなぁ…。
深刻そうな顔をしたかと思ったら大げさに笑ったり、真面目になったり呆れたり、照れ顔を見せたり…。
表情がコロコロ変わっていく。
「おはよぉーっ
あ、あなたじゃんっ!
え、早くない?」
ガラガラッと扉が開いたかと思いその方を向くと、クラスメートで友達の浅加奈実(あさかなみ)が入ってきた。
「あははっ
おはよー、雄太と同じ反応!
今日早起きしちゃってさ〜」
奈実をきっかけに雄太との会話は終了し、私は奈実がこの前行ったというとっても美味しいパンケーキ屋さんについて、ショートホームルームが始まるまで話し続けていた。
雄太も登校してきた男子数人と笑いあっていた。
その間、1回だけ雄太と目が合って、お互い、なにかの合図のように微笑んで、またそれぞれ元の話を続けた。
なんか、不思議な感覚。
今までにない感覚。
心がふわっとする感覚。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。