「オレ、今年のクリスマス、クラス会には参加してねぇ気がする。」
バレンタインまであと少しの2月初め。
学校からの帰り道、雄太が空を仰ぎながらのんびりとした口調で言った。
どういう意味?なんて、聞かなくても分かる。
そして雄太と私の視線が重なる。
胸の鼓動はいつもより速い。
「私はどーかな、元カレとは3ヶ月しか続かなかったし…」
意地悪な私はそう言いながら二人の歩調を乱すように大きく前へ出た。
「あ、ちょ、あなたっ…
なんでそんなこと言うかなぁ〜…
大丈夫っ!
オレは上手くやってく自信あるけど?」
自信満々に言う雄太に笑ってしまう。
「ふふっ。
私、“雄太と”なんて、言ってないけど?」
私はそう言いながら足を止め、後ろを振り向く。
そしてそこには驚いた顔の雄太。
「ったく〜っ!
なんでそーゆーこと言うんだよーっ!!」
ガクっとしゃがんで雄太が叫ぶ。
「あははっ
ごめんってば。」
私がそう言うと雄太は顔を上げた。
また視線がぶつかる。
雄太が微笑むと私も自然と笑顔になれる。
ドキドキ。
この胸の音は、絶対雄太には聞かれたくないんだからっ。
…こんな意地っ張りな私でも、いいって言ってくれる?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。