第5話

友情(?)の芽生え
445
2017/12/25 14:15
杏子
杏子
…さてと、そろそろ行くとするかな
あたしー佐倉杏子ーは、時計を見てよいしょっと立ち上がった。空はもう赤く染まって、太陽が半分沈んでいる。
杏子
杏子
…………
その光景を見ると……時々、思い出しちまう。あの日のことを。
あの日も、ちょうどこんな空だった。
母さんや妹から流れ出た血は、その空そっくりで…
あたしの気を、更に重くさせた。
杏子
杏子
…ダメだ、忘れよう
あたしは口に出して未練を断ち切ると、イスから立って部屋を出た。
そのままエレベーターを降りて、ロビーを出て…
もう、さっきのことは完全に忘れて(多分だが)いざ、魔女狩りに行くか!…と、気合を入れたその時…
???
…佐倉杏子
杏子
杏子
うわっ!な、何だ!?
いきなりどこからか声がかかって、あたしはガラにもなく大声を出してしまう。
だ、誰だよ!?
少しびびりながら後ろを振り返る。
杏子
杏子
…なんだ、イレギュラーじゃんか
ほむら
ほむら
…こんにちは、佐倉杏子
杏子
杏子
あ、あぁ…
大体のことではビビらないあたしだが(さっきのことは忘れてくれ)こいつを前にすると妙に体が強張る。
何故だろうな…
杏子
杏子
………
ほむら
ほむら
………
…その前に、この沈黙をどうにかしてくれ。
あたしこういう展開大嫌いなんだ。
杏子
杏子
…イレギュラーは、なんでここに来たんだ?
先に沈黙を破ったのはあたしだった。
ほむら
ほむら
魔女狩りで近くをよったの…あなたは?
杏子
杏子
あたしは…これから、魔女を狩りにいこうと思っていたところだ
ほむら
ほむら
…そうなの
…シーン…
だからこういう展開やめろって!あたしこういう展開が………(以下略)
ほむら
ほむら
…ねえ、佐倉杏子
杏子
杏子
なんだ?
おお!
密かに、沈黙を破ってくれたのを感謝する。
ほむら
ほむら
提案なんだけど、一緒に魔女狩りに行かない?
杏子
杏子
!!
え……、こいつ、そんなこと言うのか?
あたし、人を人とも思わないぐらいに、冷たいやつだと思ってた………
よかった、こいつが、少し親切を出来るような人間で
………………………って!何を考えてんだあたしは!!別にこれは単なる短い期間での協力関係なんだ。
ワルプルギスの夜を倒したら、こいつらともおさらばなんだ。それでいい。
なのに…
なんでこんなに、心苦しいんだ?
ほむら
ほむら
…いやだったかしら?
その言葉で…あたしはようやく現実に引き戻される。
頭の中の考えのせいで、あたしは周りの音が聞こえてなかったようだ。
杏子
杏子
あ、あぁ別にいいぜ
何か流れでオーケーしてしまう。
ほむら
ほむら
そう…じゃあ、行きましょう
杏子
杏子
あぁ…
あたし達はソウルジェムを取り出して辺りの魔力を二人で探りながら街を進んで行く。
ソウルジェムとは、あたし達魔法少女が契約するときに生まれる宝石。
簡単に言えば、魔法少女である証みたいなもんだ。
ほむら
ほむら
……なかなか反応がないわね
杏子
杏子
そりゃあ、魔女にも都合あるだろ?
ほむら
ほむら
…むやみに探し回ると、魔力の無駄ね
杏子
杏子
だからって言ってさ、動かねーとどっちにしても魔力は減るんだ。なら、動いて頑張って無駄な方が、後味いいんじゃねーか?
ほむら
ほむら
…あら、「杏子」にしてはまともな考えね
杏子
杏子
…何かそれ、あたしがいつもまともじゃない事を言っているような言い方だな
…………ん?
ち、ちょっと待て?今サラッと流したが、こいつ、あたしのこと………「杏子」って呼ばなかったか?
確かこいつ、いつもあたしのことはフルネームで呼んでいた筈だぞ?
ほむら
ほむら
…どうしたの?
ポカンとした表情でそっちを見ていたあたしに、イレギュラーが声をかける。
杏子
杏子
あ、いや……その…
ほむら
ほむら
…ふふ
いきなり、イレギュラーはクスリと笑った。
へぇ…こいつ、こんな優しい表情もするんだな…………って!そうじゃない!
杏子
杏子
な、何がおかしいんだよ
ほむら
ほむら
…あなたが言葉に詰まるなんて、珍しいから
杏子
杏子
…お前、あたしのこと、なんだと思ってんだ?
いきなりあたしのこと呼び捨てにしたり、笑い出したり…前までもそうだったけど、やっぱりこいつ、考えていることが全然わかんねぇ。
ほむら
ほむら
…何なのかしらね?また機会があれば教えるわ
杏子
杏子
…そっか
こいつは、さっきのような優しそうな瞳ではなく、いつもの冷酷な目に戻っていた。
…さっき優しそうに見えたのは気のせいか?


…そしてこの時、あたしは、こいつが心の中でこうつぶやいたことに気づかなかった。
ほむら
ほむら
(強がっているくせして、人一倍傷つきやすくて、みんなを邪険に扱うわりに、最終的には面倒を見てしまう………こんな、強くて優しい人…それが、私の中の佐倉杏子だわ)
杏子
杏子
…おい、イレギュラー、どこ向いてんだ?
なんか、懐かしむような顔になってどこかを見ていたから、あたしはたまらず声をかけた。
ほむら
ほむら
いえ、なんでもないわ…あと
杏子
杏子
ん?
ほむら
ほむら
その「イレギュラー」って呼び方、やめてくれないかしら?嫌なの
杏子
杏子
なんで、あたしがこいつの命令に従わないといけないんだ………という疑問が真っ先に頭に浮かんだ。
だが、次に浮かんだ考えが……、こいつは、あたしがこう言っていたことに、傷ついていたんだなって考えだった。ったく、何考えてんだか、あたしって。
自分に自分で呆れるよ。
杏子
杏子
…まあ、いいけど
ほむら
ほむら
そう…じゃあ、改めて
あたしに向けて、すっと差し出された、白い手。
杏子
杏子
………?
ほむら
ほむら
まだ、あなたにだけよろしくって言ってなかったから。よろしく、杏子
杏子
杏子
…………
正直に言って、こういう時どんな行動を取ればいいのか、あまり年相応な子達と話したことのないあたしにはよくわからない。
わかることといえば、こいつがあたしに向かって、敵意を抱いていないこと。
そして、あたしを仲間として見ていることだけだった。
杏子
杏子
…………
どう反応するか、頭を少しガリガリかいて考えた末…
あたしは、ガシッと差し出されたイレギュラー……いや、ほむらの手を握る。
杏子
杏子
…こちらこそよろしくな、ほむら

TO be continued

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