第8話

すれ違い 7
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2017/12/13 12:51
と、とりあえずバレないようにしないと……。

私はこそこそと広場の隅へ移動を開始した。
拓磨
何捜してんだ?
この辺なはず……おっ、いたいた!おーい、米村さーん!
坂宮くんの大きな声にぎくりと体が固まる。そして程なく、二つの足音が真後ろまで近付いてきた。

はあぁぁぁあっ!?

え、なんで!?こんなに人多いのに偶然見つけられるとか、不運にも程があるんですけど!!
あなた

……や、やっほー

逃げることが不可能になってしまったので、私は苦し紛れに笑顔を浮かべて動揺を隠した。

坂宮くんの隣で吉沢がぽかんとしていた。
拓磨
……は!?お前、クリスマスは家族と過ごすって言ってなかったか!?
あなた

そうだったけど、桃と出かけることになったの。……そっちもぼっちじゃなかったんだね

拓磨
お前と一緒にすんな
(あ、やべ……ミスった)
あなた

はぁー!?えっらそーに!吉沢だって彼女いないくせに――

はーいお二人さん一旦とまれ。んでこっち、な
ぐいーっと広場の中心に立つ巨大なクリスマスツリーの前に押し出される。

何!?てゆーかここ周りカップルだらけ……!
あなた

坂宮くん!何す……

ぐるんっと後ろを振り向くと、そこに坂宮くんの姿はなく。

左隣に、同じく押し出された吉沢がいるだけだった。

……消えた!?
あなた

どこ行った……!?

広場を360゜見回してみるが、坂宮くんらしき人もいなければ点灯時刻まで2分を切っていた。

待って、吉沢と二人きりとかマジで無理なんだけど!!桃も帰ってこないし……お願い沈黙辛いよ早く!!
拓磨
……おい
不意に吉沢が声を発し、私の肩は驚きと緊張とでビクッと跳ねた。

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