第7話

◻️❼◻️
396
2017/12/11 09:40
ありがとう、と彼は言った。


なにもしていないわたしにーー





           な
           ん
           で
           ?

  
あなた

そんな……わたしなにもできてない……先生にもなにも

サトシくん
そ、それでも十分嬉しいよ。気にかけてくれてるんだなって
あなた

…………



わたしはなにも言えなくなった。


だって、本当になにもしてやれていない。


それなのに、優しいなんてーー



優しいのはサトシくんのほうだ。


わたしは知っている。


花瓶の水を変えてくれているのが彼だってこと。


黒板消しの掃除をしてくれているのも彼。


クラスメイトが捨てたゴミを拾っているのも彼。


サトシくんは、わたしよりもずっと優しい。


サトシくん
あのさ……


と彼が言った。


無表情だけど、優しい目をしていた。


なによりとても綺麗な顔だ。

あなた

なに?

サトシくん
ぼくさ、来週転校するんだ
あなた

え?

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