第9話

何か言いたげな悠真
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2017/12/27 11:14
そしてそして
始業式が終わりSHRも終わり
帰る時間になった




チラッと窓から外を覗くと伊藤先輩が例の女の人と一緒に帰っていた




「はぁぁぁ…」

「うーた!」




机に突っ伏した私の元へうっかがやって来た




「帰ろ!」

「…うん」

「どうしたの?元気無いね?」





さすがうっか
鋭いな





「そういえば伊藤先輩にお土産渡せた?」

「…」




静かに首を左右に振った
あんなの渡せるわけないよ




「…伊藤先輩、彼女いたんだね」

「えっ、そうなの?」

「うん。お土産渡そうとしたときも彼女といたから渡せなかったの」

「…そっか」









新学期早々失恋ですか






「ま、まぁ!唄かわいいんだし彼氏なんてすぐ出来るよ!」






そうかなぁ


彼氏は中学のとき付き合ってた人ひとりだけ
それ以来出来ていないのだ





青春したいなぁ









「さ!帰ろ!」

「うん」

「と、その前に私お手洗い行ってくるね」





うっかはそれだけ言ってお手洗いに行ってしまった





気づいたときにはもう教室には私以外誰も残ってなかった
みんな帰っちゃったのか





そういえば明日課題考査だから帰って勉強しないとなぁ









でも居候の子も来るし、私今日勉強できるかな









「あれ、お前ひとり?」



ぼーっとしていたら部活の練習着姿の悠真が教室に入ってきた
どうやら忘れ物を取りに来たらしい



「ううん。うっか待ち」

「そうか」



そこで会話は終わった
うっかまだかな










「あのさ」









悠真が口を開いた









「お前まだ伊藤さんのこと好きなの?」









悠真は私の方に向き直ってそんなことを聞いてきた


悠真はサッカー部
伊藤先輩ももう引退しちゃってるけどサッカー部だった
だからふたりは先輩後輩の関係




でも私は今日失恋したから




「ううん」









そう答えた










でもどうしてそんなことを聞くんだろう




「失恋しちゃった。先輩彼女いたんだ…って知ってるよね」

「…まぁ」

「告白もできなかったよ。私がモタモタしてるから」






もっとアピールしてたら今先輩の隣には私がいたかもしれない

先輩の隣で笑ってたのは自分かもしれない



なんて考えてしまう










「あーあ、私も彼氏欲しいなー」





まぁこんなこと悠真に言っても意味ないし
こんなこと言ってたら余計彼氏なんて出来そうにない










早く新しい恋、見つけなきゃなぁ





















「唄」

「ん?なに?」







悠真は何か言いたげな瞳だった




















「俺、お前のこと ──── 」

「いやーごめんごめん!唄お待たせ~」




あ、うっか帰ってきた









「て、あれ?なんで悠真もいるの?部活は?」





悠真は一瞬うっかを睨んでチッて舌打ちして
“今から行く”なんて言って教室を出ていった













「なにあれ」


「さぁ?」














悠真、何言おうとしてたのかな

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