前の話
一覧へ
次の話

第3話

1-2
25
2018/01/17 08:49
放課後になった。
もう秋なので日は短く、あたりは暗くなってきている。
ほとんどの人は帰ってしまっている。
「こんなところでいい?」
「うん!」
ひとまず会議は終了したので、荷物をまとめる。
「春花、帰ろー」
夏美ちゃんがそばにやってきた。
どうせ今日は何もないし、買い食いでもしちゃおうかな。
「いいよ」
誰かが電気を消すと、教室は瞬く間に闇に包まれた。
「じゃあねー」
残りの二人に手をふり、ようやく私と夏美ちゃんが立ち上がる。
「さて、帰ろうか」
「そうだねー、まんじゅう食べたい」
「だめだよ、もう夕ご飯近いし」
まあそりゃそうか。でも私の大食いな胃は今にもぎゅるぎゅると鳴り出しそうだ。
「ええー、成長期だからいいのいいの」
「はいはい」
やった。説得成功だ。
そして、次の言葉を口に出そうと思った瞬間のことだ。
突然、静寂に重い鉄の玉を壁に当てたような鈍い音が響き渡った。
しばらく、私たち二人がなにも出来ないで黙っていると、今度はガシャンというガラスを思いっ切り叩き割ったような音もした。
…ガラスが割れた?
どういうことだろう、今日は野球部は活動していないはずだ。
それに、校舎にはほとんど人がいない。
あの二人がなにかドジを踏んだのだろうか、いや、私と大違いのしっかりして落ち着いている二人がそんなことをするのはほとんどありえない。
普段仕事を全くしない私の脳みそが珍しく高速回転しているような気がした。
というか、気がしているだけで行動は全くできていない。
「春花、固まってるけど大丈夫?」
夏美ちゃんが顔を心配そうに覗き込んできた。
そうだ、夏美ちゃんがいる。
私は大丈夫だ。なんとかやっていける。
「大丈夫、これってどういうこと?」
夏美ちゃんも首を捻る。
「まさか、不審者だったりして…」
前に、不審者が学校に侵入して人を刺したというニュースを今更思い出した。
「ひとまず学校を出よう!」
「うん!」
そうして私たちは、職員室あたりまで全速力で走った。


プリ小説オーディオドラマ