今日の体育は男女合同でバスケの授業。
男女分かれて試合をしていて、今は男子が試合中。
女子はコートの外で試合を見てる。
シュッ
______スパンッ
ここでもあの2人に注目が集まってて、
ほとんどの女子がコート脇で2人の事を応援してる。
私は咲希と離れた場所でその様子を見てた。
この後、あんな事が起きるなんて思わずに_____
試合が終盤に差し掛かった時だった。
パスが失敗したらしく、ボールがコートの外へ飛び出た。
そして______
そのボールが私の方に向かって飛んでくる。
ダメだ、避けられない…!
______バシッ
___あれ…?
何かに当たった音がしたものの、覚悟してた痛みは無くて。
ギュッと瞑ってた目を恐る恐る開けてみる。
目の前には1人の男子が立っていて、その足元にはボールが
転がっていた。
その男子は_____
さっきまで試合をしてたはずの長谷川くんだった。
バタバタッ
ドンッ
応援してた女子達が長谷川くんのそばに駆け寄ってきて、
近くに居た私は、その波に押されて転んでしまった。
転んでしまったところに、咲希が駆け寄ってきてくれた。
咲希は怒りながら女子達を睨む。
女子達は変わらず、長谷川くんの周りで騒いでるまま
こっちには全く気づいていないみたい。
何とか咲希を宥めて、立ち上がろうとした時______
目の前に誰かの手が差し出された。
見上げると、そこには長谷川くんの姿。
さっきまで女子達に囲まれてたはずなのに、どうして…?
長谷川くんに言われるがまま、その手を取る。
すると、長谷川くんは私の手を優しく引っ張って
立たせてくれた。
バタバタッ
気づいたら、今度は試合をしてた男子達が
私と長谷川くんの周りに集まっていた。
大丈夫そうなのを見て、男子達は安堵の表情を浮かべる。
これで一件落着したように思えたのも束の間______
今になって気づいた。
長谷川くんの腕が赤く腫れ上がっている事に。
きっと私を庇った時にボールで…。
驚きのあまり、男子達が慌てふためく。
そこに審判をしてた先生が来た。
騒いでいたから、様子を見に来たみたい。
腕の腫れに、先生も思わず顔を顰める。
思ってもなかった先生の発言に驚きが隠せない。
でも、私のせいで怪我をさせてしまった手前付き添いを
断る理由なんて見つからず______
女子達から痛いほど視線を受けながら、長谷川くんと2人で
体育館を後にした。
ガラガラッ
保健室に来たものの、先生の姿は見当たらなかった。
しばらく待ってみたけど、先生が戻ってくる気配は無い。
待つのをやめて、冷やす物を探し始めた。
保冷剤は見つけられたけど、それをくるめる物が
見つからなかった。
……仕方ない。
自分の持ってたハンカチで保冷剤をくるんで
長谷川くんの腕に置いた。
長谷川くんは渡したハンカチをじっと見つめてる。
顔を上げて長谷川くんの方を見る。
キーンコーンカーンコーン
そうお礼を言ったところで、授業の終了を知らせる
チャイムが鳴った______
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!