「はい。冷えピタと、水」
「ありがとう、あなた」
布団の中で少しうとうとしていれば、あなたが冷えピタと水を用意してくれたようだ。
「いえいえ。…あ、冷えピタ貼ってあげる!」
「え、いいよ。自分で貼る」
「風邪のときくらい甘えてよ。…ほら、前髪上げて ~ 」
俺の言葉での抵抗は無駄か…笑
しょうがなく前髪を軽く上げた。少しすればヒヤッという感覚に少しばかり体が強ばる。
「よし、いい感じ。」
そう言いながら俺の額に貼られた冷えピタをペタペタ軽く叩いてきた。それと同時に冷たいのが伝わるからあなたの手を掴んで辞めさせる。
「もぉ。…ほら、早く寝なきゃ治んないよ ~」
「はいよ。」
俺が目を瞑れば耳の近くで"おやすみなさい"なんて優しく囁かれるから熱が上がりそうで。
ていうか、そんなことされちゃ眠れねぇよ。
このバカあなたが。可愛すぎんだよ。
俺が眠れないでいると部屋の片隅から電話の音。
「ん…?」
音の方へと目を向ければあなたの鞄があった。
「あ、私の携帯か…」
「…出ていいよ?」
「あ、うん。ごめんね ~ 」
あなたが携帯へと手を伸ばし、画面を見たようだ。
しかし、途端に顔色が変わった。
「あなた…?」
「…あ、ううん。なんでもない」
なんていつもみたいに微笑むけど何かが違う。
さっとベッドから降りてあなたの近くへと腰を下ろした。
「ちょ、風磨くん寝てなきゃ…」
「…大丈夫。んなことより、出なくていいの?」
「うん、大丈夫だよ」
あなたから鳴り続ける携帯に目を移す。
あなたは画面を隠してるようだけど、俺の角度からチラッと画面が見えてしまった。
そこには
『中島健人』
の文字。
「…中島からじゃん」
「っ…本当に気にしなくていいから…ね?」
君の顔はなんだかぎこちない。
そんな顔を見られたくなかった?
俺の目は君の手で優しく隠されちゃった。
俺なんかと居ちゃダメじゃん。
君の世界で1番大切な人からの連絡なんだよ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。