体を離し,真剣な目をして見てくる竜胆さん。
ポロポロと私の目からは涙が溢れた。
泣いている私の頭を撫でて抱きしめてくれる竜胆さんに体重を預ける。
何度も名前を呼んで,思い出そうとしても思い出せない苦しさを紛らわせて,
ギュッと抱きつく力を強めて,竜胆さんで頭をいっぱいにするように。
確かにそうだと思った,けれど竜胆さんなら私は嫌だと思わない。
ここ数日間,一度も嫌だと思ったことはなかった。
ニコッと微笑みを返すと目を掌で覆われて,チュッとまたキスをされた。
今度は自分で目を瞑る,すると優しいキスが落ちてくる,こういう所も好き。
ニコリと微笑んで軽く手を振ると竜胆さんも振り返してくれる,やっぱり優しい。
反社だとしても竜胆さんは優しいのだ。
今でもこれが本当のことかよく分からない。
疲れたからだろうか,急な睡魔に私は瞼を閉じた
目を開けるとそこには目の前で寝ている竜胆さんが。
グイッと眠っている竜胆さんに引っ張られて私は竜胆さんの腕の中にすっぽり埋まっていた。
ど,どうしよう,起こしてもいいのかな……
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。