静まり返った真夜中に、私とクロは縁側で二人、話し続けていた。
九条。ここでもまた九条、か。望んで生まれたわけでもないのに、その名前はいつまでも私を縛り続ける。忌々しいまでに。
私の挑発にクロはにやりと笑うと、ぐいっ! と私の後ろ頭を抑えて強引に自分の膝へ押し付けた。
いつになく強引なクロ。内心で軽いパニックになりかけた私に、
クロは私の髪を優しく撫で付け、告げる。
クロの膝に頭を乗せ、夜空を見上げる私の目の前には綺麗な星空が広がっていた。
男の力で押さえつけられた瞬間の恐怖に、頬が赤くなる。
本当はちょっとなんてものではなかったが、私のプライドがそう言わせた。
そんな私の虚勢を前にクロは、
私の頬を人差し指でぷにぷにと突きながら、そう一笑に付した。
守ってやる。
そんなことを言われたのは私にとって初めてのことだった。
だから……
私はクロの手を振り払い、立ち上がる。
こちらを見上げるクロを見下ろしながら、私は私の譲れない想いを口にする。
それは拒絶の意志。
睨むように向かい合う私達を、月明かりだけが優しく照らしていた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。