第18話

【2日目】追いつくために
408
2024/04/29 10:00

 ここは……COLの……


 RADWEEKENDが開かれた会場の、入口。

白石 杏
白石 杏
 どうして、私はここに… 
白石 杏
白石 杏
 私、処刑されるんじゃないの…? 


 もしかして……ここが、処刑場所……?

白石 杏
白石 杏
 っっっっ!!!! 
白石 杏
白石 杏
 嫌だ…こんな思い出深い 
場所で、死ぬなんて………っ


 そのとき、中からすごい歓声が聞こえてきた。

白石 杏
白石 杏
 っ、!誰か歌ってるんだ… 

 しかも、なにこの歌声……


 自然と……引き込まれる感じ……


 歌ってるのは、女の人?


 あ、2人の男の人の声も聞こえる。


 女の人が1人、男の人が2人、か。

白石 杏
白石 杏
 ……凪さんたち……のわけないか 

 凪さんたちとは、歌声も歌い方も違う。


 じゃあ、誰が……?


 それにこの声……どこかで聞いたことある……

白石 杏
白石 杏
 ……ちょっとくらい、入ってもいいよね 
白石 杏
白石 杏
 なんでかわかんないけど、 
ミクもいなさそうだし


 私は、ライブハウスの中へ入る。


 観客は、後ろの方までたくさんいる。

白石 杏
白石 杏
 っ…、見えない… 

 私は群れを掻き分け、声のする方へ向かう。


 そこで歌ってたのは______
























白石 杏
白石 杏
 っっっ!!!?? 


小豆沢 こはね
小豆沢 こはね
  ♪__〜〜〜!!! 
青柳 冬弥
青柳 冬弥
 ♪__〜〜〜〜 
東雲 彰人
東雲 彰人
 ♪__〜〜〜〜!!!! 


 そこにいたのは、


 こはね、彰人、冬弥私の仲間たちだった。


白石 杏
白石 杏
 この歌声、こはねたちだったの?! 

 にしても、すごい……


 みんな、私が知ってるときより上手くなってる。

白石 杏
白石 杏
 ( こんな歌声、初めて聞いたよ… ) 


観客
 やっぱすげーな、ビビバス 
観客
 あぁ。もうこんなん、超えてるだろ 
観客
 RADWEEKEND 
白石 杏
白石 杏
 !? 
白石 杏
白石 杏
 RADWEEKENDを……超えてる……? 


 でもたしかに、この感じ、あのときに似てる。


 RADWEEKENDと同じくらい…


 ううん、もしかしたらそれ以上かも。





白石 杏
白石 杏
 ( ……でも、 ) 
白石 杏
白石 杏
 ( ならなんで、私はみんなと・・・・  
 同じ場所・・・・にいないの……? )

 「RADWEEKENDを超えるんだ」って、


 私たち、ずっと4人で頑張ってたのに……!!



観客
 そういや、前までもう1人いたっけ 
観客
 あぁ……謙さんの娘だろ? 
観客
 白石杏、だっけ 
白石 杏
白石 杏
 !!? 

 私の、名前……

観客
 4人で超えたいって言ってたよな 
観客
 はぁ?4人で? 
























観客
 むりだろ 






白石 杏
白石 杏
 ………え、? 
観客
 あいつ、他の3人の足引っ張ってんの 
気付いてなかったよな
観客
 ほんとはもう、他の3人の方が 
すげえのに、1人浮かれててさ



 な、に……?それ……


 私が………みんなの足を、引っ張ってた……?


白石 杏
白石 杏
 ( そん、な… ) 
白石 杏
白石 杏
 ( そんな、わけ…… ) 

観客
 謙さんの娘ってだけで、調子 
乗ってたんだよ。皆のこと下に見てさ


白石 杏
白石 杏
 ( ちがう…… ) 
白石 杏
白石 杏
 ( 私は、皆を下になんて……ッ ) 


観客
 あいつがいなくなって、 
清々したよな、オレらも
白石 杏
白石 杏
 やめて!!!!!! 


 気付いたら、私は叫んでた。

白石 杏
白石 杏
 やめてよ……そんな……私……ッ 






















小豆沢 こはね
小豆沢 こはね
 杏ちゃん? 

 次に目を開けたとき、


 周りの観客は誰一人いなくなってて、


 この場には、私たち4人だけが残った。






小豆沢 こはね
小豆沢 こはね
 杏ちゃん!!私たち、超えられたよ! 
小豆沢 こはね
小豆沢 こはね
 RADWEEKEND!!杏ちゃん無しでも 
超えられたよ!私たち!!
白石 杏
白石 杏
 っっっ!!!!!! 
東雲 彰人
東雲 彰人
 ついにやり切ったな、3人で 
青柳 冬弥
青柳 冬弥
 あぁ。 
白石 杏
白石 杏
 な、んで…… 
白石 杏
白石 杏
 やっぱり……私がみんなの 
足を引っ張ってたってこと…?

 そんな……


 死ぬ前にこんな現実……ひどい……





小豆沢 こはね
小豆沢 こはね
 杏ちゃん… 
小豆沢 こはね
小豆沢 こはね
 私は、杏ちゃんとも歌いたい 
小豆沢 こはね
小豆沢 こはね
 だから____ 






小豆沢 こはね
小豆沢 こはね
 今ここで、歌って? 
白石 杏
白石 杏
 え……? 
小豆沢 こはね
小豆沢 こはね
 杏ちゃんの歌声、いま、 
私たちに聞かせて?


 どういう仕組なのか、


 私の足元には、いつの間にかマイクが転がってた。

東雲 彰人
東雲 彰人
 お前の今の歌声、聞かせてみろ 
青柳 冬弥
青柳 冬弥
 俺達には白石の歌声が必要だ 
白石 杏
白石 杏
 ……!! 
白石 杏
白石 杏
 ( 3人とも、私を必要としてる……? ) 
白石 杏
白石 杏
 ( それなら私がするべきなのは… ) 







白石 杏
白石 杏
 ( みんなの期待に答えられるよう、 
 歌うこと……!! )
白石 杏
白石 杏
 ♪__〜〜〜!!! 


 いい!今、いい感じ!!


 最近の練習の中で、一番手応えある!!

小豆沢 こはね
小豆沢 こはね
 …… 
東雲 彰人
東雲 彰人
 …… 
青柳 冬弥
青柳 冬弥
 …… 


 3人とも、私の歌を聞いてくれてる。


 でも、今の私の歌声なら、


 みんな、認めてくれるんじゃない…?





白石 杏
白石 杏
 ハァッ、ハァッ…… 
白石 杏
白石 杏
 ど……どう? 


 私の精一杯を歌いきり、3人に問う。

小豆沢 こはね
小豆沢 こはね
 …… 
小豆沢 こはね
小豆沢 こはね
 杏ちゃん、 


























小豆沢 こはね
小豆沢 こはね
 本当に、いまのが、 
杏ちゃんの全部なの?








白石 杏
白石 杏
 ……えっ、? 

 こはね……?


 一体、なにを、…


 すると、彰人と冬弥も口々に言う。
東雲 彰人
東雲 彰人
 あぁ、オレも思った 
東雲 彰人
東雲 彰人
 お前、この頃なにしてたんだ? 
そんな歌じゃ、いつになっても
オレたちには追いつけねえ
青柳 冬弥
青柳 冬弥
 ……白石、 
青柳 冬弥
青柳 冬弥
 はっきり言わせてもらうが…… 
青柳 冬弥
青柳 冬弥
 今の白石の歌からは… 
なにも、感じられなかった
白石 杏
白石 杏
 う、そ………でしょ……? 
白石 杏
白石 杏
 私、結構やり切ったよ? 
手応えだってあったのに……っ
東雲 彰人
東雲 彰人
 そんなぬるいから、オレたちに 
追いつくことができねんだよ
東雲 彰人
東雲 彰人
 例えば、一番盛り上げてたとこ 
あんだろ、あそこはもっと…
東雲 彰人
東雲 彰人
 ♪___〜〜〜〜!!!!!! 
白石 杏
白石 杏
 っっ!!! 


 すごい……


 私が、上手く歌えたと思った部分も、


 彰人は、それ以上の力で歌ってる。

東雲 彰人
東雲 彰人
 こんな感じだろ 
白石 杏
白石 杏
 っ…… 


 これが……RADWEEKENDを超えた3人と、私の違い…?

青柳 冬弥
青柳 冬弥
 白石、俺らが特訓してやる 
小豆沢 こはね
小豆沢 こはね
 また4人で、歌いたいから! 
ねっ、杏ちゃん!!
白石 杏
白石 杏
 こはね、冬弥… 
白石 杏
白石 杏
 ありがとう!! 
お願いします!!!


 私が、足を引っ張ってたんだもん。


 みんなから教わって、今度こそ、


 みんなの隣に、並ばなくちゃ……!!!!!!!!

























































































 それから、どれくらい経った?


 わからない。


 私は、こはねたちに特訓してもらいながら、


 私の中にあるものを精一杯振り絞って、歌った。


 何度も、何度も、何度も、何度も……


 それ、でも……







 こはねたちは、私の歌を認めてくれなかった。

白石 杏
白石 杏
 ハァッ…ハァッ…ハ……カハッ… 


 私はこはねたちに無茶苦茶言われながら歌い続け、


 呼吸をするのが………困難になっていた。

白石 杏
白石 杏
 ハァッ、ハァ、ハァ……ッ 
小豆沢 こはね
小豆沢 こはね
 も〜杏ちゃん、まだ良くならないよ? 
小豆沢 こはね
小豆沢 こはね
 ほらここの部分、もっと声出して! 
白石 杏
白石 杏
 ( 苦ッ……しい…… ) 
白石 杏
白石 杏
 ( もう、声が……出ッ…ない…… ) 


 私は自分で自分の身体が支えられなくなり、


 そのまま、






 バタンッ








 倒れてしまった。

白石 杏
白石 杏
 ( 立………て、ない……… ) 
白石 杏
白石 杏
 ( 手も足も……動かない…… ) 
東雲 彰人
東雲 彰人
 おいおい、まさか、もう 
歌えないって言うんじゃねえだろうな?


 歌え、ない……


 身体も、動かないし…


 歌えないどころか、声も出ないの……

青柳 冬弥
青柳 冬弥
 お前の本気は、そんなものだったのか? 


 違う……


 私は、超えたかった。


 本気で、本気で本気で、


 4人で、RADWEEKENDを、超えたかった…

白石 杏
白石 杏
 ……ッ…!!! 
白石 杏
白石 杏
 ( でも…… ) 
白石 杏
白石 杏
 ( もう……ムリだよ…… ) 
白石 杏
白石 杏
 ( 3人には……追いつけない……ッ ) 
小豆沢 こはね
小豆沢 こはね
 …… 
小豆沢 こはね
小豆沢 こはね
 それなら、もう 
杏ちゃんに用はないよ
小豆沢 こはね
小豆沢 こはね
 少しでも期待した、 
私たちがバカだったよ


 こはねは、冷たい目で私を見る。


 こんなこはね……初めて、みた……


















小豆沢 こはね
小豆沢 こはね
 さよなら、杏ちゃん 



白石 杏
白石 杏
 っ……!!!!!! 


 そう言い、こはね、彰人、冬弥は、私から離れてく。




白石 杏
白石 杏
 ( 待っ………て……… ) 
白石 杏
白石 杏
 ( お願い……みんな、待って………ッ! ) 


 そう思っても、もう無駄だった。


 3人はもう……私の手には届かないところにいる。


 私は……このライブハウスで1人、


 大粒の涙を流しながら、倒れてる。



 ……あぁ、そっか。


 3人には追いつけないから、私はこのまま死ぬんだ。



白石 杏
白石 杏
 ッ…… 
白石 杏
白石 杏
 …な…………いで……… 


















白石 杏
白石 杏
 置いて……いかないで………ッ 




 認めたくなかったな…











 こんな思い出深い場所で、


 しかも仲間たちに捨てられて、


 1人……………最期を迎えるなんて……………


















 大広間

小豆沢 こはね
小豆沢 こはね
 …… 


 杏ちゃんが投票で選ばれて、大広間からいなくなって


 かなりの時間が経った。


 こんなに時間がかかるものなの…?


 もしかして、このまま生きて戻ってくるんじゃ…






初音ミク
初音ミク
 みんな、おまたせ〜!! 
初音ミク
初音ミク
 今、やっと杏が死んだよ!☆ 



 そんな私の小さな期待を、


 ミクちゃんはなんの容赦もなく切り捨てる。









小豆沢 こはね
小豆沢 こはね
 ……………………………え、 
青柳 冬弥
青柳 冬弥
 ……ッ、!!! 
東雲 彰人
東雲 彰人
 杏……ッ 
初音ミク
初音ミク
 いろいろあってね、つい 
遅くなっちゃったね!
青柳 冬弥
青柳 冬弥
 いろいろ……? 
初音ミク
初音ミク
 可哀想だったな〜杏。仲間に 
捨てられて最期を迎えるなんてさ
小豆沢 こはね
小豆沢 こはね
 え…… 
小豆沢 こはね
小豆沢 こはね
 仲間に捨てられる、って…… 
東雲 彰人
東雲 彰人
 ミク、一体どういうことだ? 
初音ミク
初音ミク
 あっ、いけない、口が滑っちゃった☆ 
処刑については、自分が処刑される
ときまでのお楽しみだったね!!
初音ミク
初音ミク
 じゃあこのあとはフリータイム! 
お昼食べるなり部屋に戻るなり、
好きにしていーよ!!☆☆
小豆沢 こはね
小豆沢 こはね
 …… 
東雲 彰人
東雲 彰人
 …… 
青柳 冬弥
青柳 冬弥
 …… 
小豆沢 こはね
小豆沢 こはね
 私………………部屋に、戻るね…… 
東雲 彰人
東雲 彰人
 っ……こはね…… 
青柳 冬弥
青柳 冬弥
 …… 


 こうして、2日目の処刑は……終了した。

プリ小説オーディオドラマ