ここは……COLの……
RADWEEKENDが開かれた会場の、入口。
もしかして……ここが、処刑場所……?
そのとき、中からすごい歓声が聞こえてきた。
しかも、なにこの歌声……
自然と……引き込まれる感じ……
歌ってるのは、女の人?
あ、2人の男の人の声も聞こえる。
女の人が1人、男の人が2人、か。
凪さんたちとは、歌声も歌い方も違う。
じゃあ、誰が……?
それにこの声……どこかで聞いたことある……
私は、ライブハウスの中へ入る。
観客は、後ろの方までたくさんいる。
私は群れを掻き分け、声のする方へ向かう。
そこで歌ってたのは______
そこにいたのは、
こはね、彰人、冬弥だった。
にしても、すごい……
みんな、私が知ってるときより上手くなってる。
でもたしかに、この感じ、あのときに似てる。
RADWEEKENDと同じくらい…
ううん、もしかしたらそれ以上かも。
「RADWEEKENDを超えるんだ」って、
私たち、ずっと4人で頑張ってたのに……!!
私の、名前……
な、に……?それ……
私が………みんなの足を、引っ張ってた……?
気付いたら、私は叫んでた。
次に目を開けたとき、
周りの観客は誰一人いなくなってて、
この場には、私たち4人だけが残った。
そんな……
死ぬ前にこんな現実……ひどい……
どういう仕組なのか、
私の足元には、いつの間にかマイクが転がってた。
いい!今、いい感じ!!
最近の練習の中で、一番手応えある!!
3人とも、私の歌を聞いてくれてる。
でも、今の私の歌声なら、
みんな、認めてくれるんじゃない…?
私の精一杯を歌いきり、3人に問う。
こはね……?
一体、なにを、…
すると、彰人と冬弥も口々に言う。
すごい……
私が、上手く歌えたと思った部分も、
彰人は、それ以上の力で歌ってる。
これが……RADWEEKENDを超えた3人と、私の違い…?
私が、足を引っ張ってたんだもん。
みんなから教わって、今度こそ、
みんなの隣に、並ばなくちゃ……!!!!!!!!
それから、どれくらい経った?
わからない。
私は、こはねたちに特訓してもらいながら、
私の中にあるものを精一杯振り絞って、歌った。
何度も、何度も、何度も、何度も……
それ、でも……
こはねたちは、私の歌を認めてくれなかった。
私はこはねたちに無茶苦茶言われながら歌い続け、
呼吸をするのが………困難になっていた。
私は自分で自分の身体が支えられなくなり、
そのまま、
バタンッ
倒れてしまった。
歌え、ない……
身体も、動かないし…
歌えないどころか、声も出ないの……
違う……
私は、超えたかった。
本気で、本気で本気で、
4人で、RADWEEKENDを、超えたかった…
こはねは、冷たい目で私を見る。
こんなこはね……初めて、みた……
そう言い、こはね、彰人、冬弥は、私から離れてく。
そう思っても、もう無駄だった。
3人はもう……私の手には届かないところにいる。
私は……このライブハウスで1人、
大粒の涙を流しながら、倒れてる。
……あぁ、そっか。
3人には追いつけないから、私はこのまま死ぬんだ。
認めたくなかったな…
こんな思い出深い場所で、
しかも仲間たちに捨てられて、
1人……………最期を迎えるなんて……………
大広間
杏ちゃんが投票で選ばれて、大広間からいなくなって
かなりの時間が経った。
こんなに時間がかかるものなの…?
もしかして、このまま生きて戻ってくるんじゃ…
そんな私の小さな期待を、
ミクちゃんはなんの容赦もなく切り捨てる。
こうして、2日目の処刑は……終了した。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。