第40話

☃️掌の上で
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2023/06/13 01:00
この反応は一体どっちだろうな?


分かりやすく恥ずかしがって顔を隠したところまではわかる。
ただ、そもそも単純に天然で勘違いしたのか、何か期待していたのか。

1番重要なところがわからなくて、これだけ大胆なことをしてるくせに未だに臆病な自分がいることを認めざるを得ない。

Yg
まぁ元々そのつもりだったけどな
you
……ひどい。
やられた。ひどい、、
別に俺は何も悪いことはしてないと主張しながら、掌の上でぴーぴー喚いてるあなたを突くのは楽しい。
you
ねぇ待って、
Yg
ん、
you
でも、間に合うよね?
Yg
多分な
you
じゃぁホテル取る必要なくない…?
会社に寄った時に頼んでおいて、さっきその返事が来たんだよと説明すると簡単に信じる可愛いやつ。

嘘ではないけど、断ろうと思えばさっきもキャンセルくらいできた。
それを敢えて断らなかったんだというところまでは気付かないらしい。
you
そっかぁ〜
能天気に納得しながらも嬉しそうな表情を見せる。


その理由は、有名ホテルだからか?
それとも帰るのは面倒だからか?
ただ時間に間に合うことだけ考えてるのか?

答えがなんだったとしても、きっと
「俺と一緒にいれるから」
ではないんだろうなと思うと、やっぱりやさぐれたくなる。

それでも明日がやっと来る。

お互いに一つの区切りになるだろうことはわかっていた。

直接祝いに行くあなたと、1人で燻ってる俺。

明日が終わったら俺達はどう変化するのだろうか。

俺達に、未来はあるのか。


"その瞬間" を今か今かと待ち侘びて干からびそうだ。気付いたら爺さんになってんじゃねぇかって思うくらい、普段の俺らは穏やかな隣人だ。
片想いが長すぎる大人は、どうやって始めればいいんだろうな?

披露宴会場に着いたのはちょうど21時頃で、小走りで入り口へと向かうあなたの背中を見守った。

ナビでホテルへの道順を検索すると急に実感が湧いてくる。

自分の選択は正しかったのか?
一体何をしようとしてるのか。
…いや、何もするつもりはない、今のところは。


ただ、いつもの俺達みたいに、明日の為の前夜祭をしよう。

お互いの傷を確かめ合って、そこにヘタクソな絆創膏を貼り合うだけだ。

本当は傷なんかないところに、あなたの手が触れるだけで今はいい。


あの温もりが消えなければ、それでいい。
ちょっと胸が痛いくらいは、いくらでも我慢してやるよ。
結局、掌の上で転がしてると思ってる相手に実際に転がされてるのは俺の方だ。

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