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第8話

エピローグ
112
2018/03/05 12:50
2022年 春

桜が咲き誇る中、私は黎からの帰国の連絡を受け、空港に来ていた。

(会うの4年ぶりかぁ。)

長かったようで、短かった4年。
再会をずっと楽しみにしていた。

腕時計で時間を確認すると、飛行機の到着時間を過ぎていた。
もうそろそろゲートから出てくるだろうかと思い、待合席から立ち上がろうとしたとき、目の前が真っ暗になる。

「え!?誰!?」

私は慌てて、じたばたする。

「ただいま。」

聞きなれた、懐かしい声。
私は動きを止める。
ゆっくりと光を閉ざしていた手が離れていく。
振り返ると、黎がいた。

「黎。」

泣かないと決めていたのに、涙がぽろぽろとこぼれ落ちていく。
黎はほほえみながら、私の涙を指で拭っていく。

「ただいま。」

「…おかえり。」

4年前より、すごく大人っぽくなった。
かっこよさが増している。

「…そのままでいいから、聞いて。」

「なに?」

「ちゃんと言ってなかったから…。」

そう言って、ポケットから取り出したのは小さな箱だった。
黎が慎重に開ける。
中には、指輪が入っていた。
座っている私の目線に合わせるように、しゃがむ。

「俺と…結婚してください。」

「…ん?付き合ってじゃなくて?」

4年前、浩介は恋人と言っていたけど、私も黎も付き合おうとは言っていなかったから、てっきりただの両想いだと思っていた。
黎もキョトンとしている。

「え、あー…ごめん。今すぐ結婚じゃなくていいから、結婚を前提に付き合ってください。」

「…はい。」

私が満面の笑みで答えると、黎は指輪を丁寧に箱から出して、私の左手の薬指にはめた。

「黎。」

「なに。」

「大好き。」

「じゃあ…。」

照れた顔を隠すように俯いていた黎が顔を上げて、私に優しく口づけた。

「俺は、愛してるよ。」

恥ずかしかったのか、黎の顔がすぐに赤くなる。
おかしくなって私が笑い出すと、黎もつられて笑顔になった。
第一印象は最悪だった

絶対関わりたくないって思ったのに
仲良くなれないと思ったのに

ちょっと強引な君は
毎日私に声をかけてきて
だんだん距離が縮まっていって
私はいつのまにか、君を好きになっていた

そして今も、これからも

私はずっと、君を愛しています
Fin.

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