2022年 春
桜が咲き誇る中、私は黎からの帰国の連絡を受け、空港に来ていた。
(会うの4年ぶりかぁ。)
長かったようで、短かった4年。
再会をずっと楽しみにしていた。
腕時計で時間を確認すると、飛行機の到着時間を過ぎていた。
もうそろそろゲートから出てくるだろうかと思い、待合席から立ち上がろうとしたとき、目の前が真っ暗になる。
「え!?誰!?」
私は慌てて、じたばたする。
「ただいま。」
聞きなれた、懐かしい声。
私は動きを止める。
ゆっくりと光を閉ざしていた手が離れていく。
振り返ると、黎がいた。
「黎。」
泣かないと決めていたのに、涙がぽろぽろとこぼれ落ちていく。
黎はほほえみながら、私の涙を指で拭っていく。
「ただいま。」
「…おかえり。」
4年前より、すごく大人っぽくなった。
かっこよさが増している。
「…そのままでいいから、聞いて。」
「なに?」
「ちゃんと言ってなかったから…。」
そう言って、ポケットから取り出したのは小さな箱だった。
黎が慎重に開ける。
中には、指輪が入っていた。
座っている私の目線に合わせるように、しゃがむ。
「俺と…結婚してください。」
「…ん?付き合ってじゃなくて?」
4年前、浩介は恋人と言っていたけど、私も黎も付き合おうとは言っていなかったから、てっきりただの両想いだと思っていた。
黎もキョトンとしている。
「え、あー…ごめん。今すぐ結婚じゃなくていいから、結婚を前提に付き合ってください。」
「…はい。」
私が満面の笑みで答えると、黎は指輪を丁寧に箱から出して、私の左手の薬指にはめた。
「黎。」
「なに。」
「大好き。」
「じゃあ…。」
照れた顔を隠すように俯いていた黎が顔を上げて、私に優しく口づけた。
「俺は、愛してるよ。」
恥ずかしかったのか、黎の顔がすぐに赤くなる。
おかしくなって私が笑い出すと、黎もつられて笑顔になった。
第一印象は最悪だった
絶対関わりたくないって思ったのに
仲良くなれないと思ったのに
ちょっと強引な君は
毎日私に声をかけてきて
だんだん距離が縮まっていって
私はいつのまにか、君を好きになっていた
そして今も、これからも
私はずっと、君を愛しています
Fin.
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。