第3話

2023/08/27
17
2023/09/09 08:00
 早朝の九時、日曜日だからと言いまだ寝ているひとも多数いそうな時間帯だろうか。朝井は、そんな朝から夜久の家の前にいた。昨日は部活があったため十七時に訪問する選択をしたが、占い師と一緒にいる時間が長いほうがいいという朝井なりの思考で、夜久を呼んでいる最中なのだ。今頃、おそらく夜久はインターホンに朝井が映っていることに困惑しているだろう、なんせ朝井は一言も言わずに来たのだから。
夜久翼やどめつばさ
はぁぁぁあ……だよな……やっぱお前だよな……
 ガチャリと扉を開けたのは夜久だった。夜久は朝井を見るや否、大きな溜息を吐き、まるで朝井が来ることをわかっていたような反応を示した後に朝井を睨んだ。そんな様子の夜久を揶揄うように笑った朝井は、有無を言わせる前に夜久を引っ張った。「既視感半端ないんだけど、昨日もこれやったよな?」と朝井に問うた夜久の声は朝井には聞こえなかったようである。
朝井航あさいわたる
梅雨さーん!! 占いお願いしまーす!
 昨日と違うのは時間帯と挨拶がない部分だろうか。それ以外は殆ど同じと言える。朝井の体力が有り余っていることも、夜久が肩で呼吸をしているところも、梅雨がいる場所も、全部。朝井のお願いをすんなり受け入れた梅雨は「まず今日の運勢占うねー」と言い占いを始めた。
梅雨つゆ
二人とも今日運勢いいじゃん! じゃあまず乙女座くんの結果言うね。水瓶くんはできれば少し離れていてくれるかな? 五分後くらいに戻ってきてくれる?
 朝井に離れるよう頼んだのは個々で占いの結果を話す為である。朝井はすんなりと受け入れ、ふらふらとどこかへ歩いて行った。すると梅雨が「じゃあ乙女座くん」と話を始める。
夜久翼やどめつばさ
俺、占ってなんて言ってないです。呪いを解消するなんて無理に決まってる
梅雨つゆ
あーあまり占い信じてないタイプ? うーんまあ聞いてよ、君、今日の運勢すっごくいいんだよ!
 梅雨が興奮気味に話すため、夜久は折れてしまった。朝井が戻ってくるまで五分はあるため、立って何もしないよりマシだと考えたのだろう。適当に「聞くだけ聞く」という意思を伝えると、梅雨は明るく、楽しそうに占い結果を語り出した。
梅雨つゆ
何もかも思い通りに進む日なんだよ! すごいよね!! 困っていたら誰かが助けてくれたり、ふと思ったことが現実になったり様々! 今正に困っている君を私が助けてるよね。どう? 少しは占い信じてくれた? ああでも暴言とか言っちゃダメだよ、自分に返ってきちゃうから。今日は水瓶くんと仲良くなるには絶好のチャンス!
 おそらく全てを言い終えた梅雨はとても満足そうだ。先程彼女が述べた占い結果は紙などに書かれている様子はなく、全て記憶しているのだろう、占い師としては上級者かと思われる。更には夜久を黙らせる程のトーク力は朝井と同等、もしくはそれ以上だと言えるだろう。夜久は最初の方こそ聞き耳を少しだけ立ててはいたが、後半から圧倒されてしまい何も覚えていない様子だ。
梅雨つゆ
そんな感じだけど、どう? あれ、乙女座くーん?
 夜久を圧倒させた張本人、梅雨は惚けたように夜久の名、ではなく「乙女座くん」と勝手に付けたあだ名を呼び続ける。
夜久翼やどめつばさ
あ、ありがとうございます……?
 そんな中でも正気を取り戻した夜久は疑問に思いながらも返答した。今の夜久の脳内には「航早く帰ってこい……!!」という気持ちでいっぱいだ。
梅雨つゆ
よかったー! 水瓶くん来るまでまだ時間ありそうだけど何か聞きたいことある?
夜久翼やどめつばさ
別に特には
梅雨つゆ
もー、愛想悪いなぁ? まあ何かあったら言ってね!
 梅雨の言葉を最後に、二人の会話は途切れた。夜久は「早く帰ってこい……」と何度も何度も繰り返し念じるのであった。
2023/08/27の乙女座の運勢
 何もかもあなたの思い通りに進む日です。運気は絶好調。ふと思い浮かべたことが現実になったり、困っていると誰かが助けてくれたり、努力せずとも幸運が舞い降ります。だからといって、他人を害することや無謀なことは自分に跳ね返ってくるのでやめましょう。この幸運を生かすには、流れに任せるのが最適です。きっかけだけつくり、あとは状況を見守るだけで大丈夫。特に、人間関係には有効なので、親交を深めるチャンスは逃がさないでください。
ホトリエより引用

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