第36話

私が…生き残り?
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2018/04/22 18:31
広間につくと、もうすでにそこにはみんな集まっていて、私はソンウの隣に座らせられた。
ジソンさんはソンウの方を見ながらなにか目で合図する。
ソンウ
…急遽みんなに集まってもらったのは、知らせたいことがあるから…。ヒョン
ジソン
前に話した事、覚えてる? あなたちゃんは初めて聞くと思うけど。
デフィ
え、ヒョン。それって、
ジソン
……あなたちゃんが魔女の生き残りの可能性が高いってこと。
○○
……っえ?
ソンウン
それを今言うってことは…
ジソン
うん。それがさっき証明された。あなたちゃんは少しだけど、魔女の能力を受け継いでたんだ。…ソンウ
ソンウ
…俺がさっき、無意識にあなたの血を吸っちゃったんだ。
ミニョン
っ! ソンウ、なんてこと…
ソンウ
わかってる、ルールを破った。でも、あなたは一瞬倒れたけど普通の人間より回復が遥かに早かったんだよ。それに吸血鬼の噛み跡は数ヶ月消えないはずなのに、あなたの噛み跡は一瞬で消えたんだ。
ジニョン
本当なの…?ヌナ
○○
え、え……、
ジソン
あなたちゃんは今混乱してるから。
ジェファン
それはそうですよ。僕達だって混乱してますし…
ウジン
生き残りってことですか?
ジソン
そうとも言えるかな…
○○
ま、待ってください!
みんなだけで話が進んでて、理解してて、私は何もわかってないのに。私が魔女の生き残り?受け継いでる?どういうこと?
現実味が無さすぎて理解ができない。さっきのこともあってグチャグチャしてるのに、こんなこと……
○○
一体どういうことなんですか……
ソンウン
…あなたがここに呼ばれた一番の理由だよ。
○○
一番の理由…?
ジソン
あなたちゃんは偶然ここに来たわけじゃないんだよ。数年前にもここに来てる。覚えてない?
○○
私がここに?来たことなんて…
ジソン
言ってたでしょ?5歳の時この街に来て、迷子になったことがあるって
ジソン
その時、ここに来たんだよ。あなたちゃん
○○
私が……ここに…
ジソンさんに言われ、一瞬頭の中に昔の記憶がよぎる。

5歳の夏の日、私はたしかにこの街で迷子になった。その時みたあの館……懐かしい感覚。
その瞬間、パズルのピースが揃ったように私の頭の中で過去の記憶が蘇ってきた。

この館に来た時懐かしいと感じたこと、ジソンさんの匂いが懐かしいと感じたこと、ここにいなきゃと感じたこと。
だから。だからそう感じたんだ。
○○
……これって、
ジソン
…思い出した?
ここに来られるのは僕達が招いた者か、それを引き寄せるものだけなんだよ。
ソンウ
あなたは無意識に魔を引き寄せるんだ。
だから極度に近づくと、俺達は力を抑えられなくなる。さっきの俺みたいに
○○
魔を引き寄せる?…じゃあ、両親が離婚したのって、夏から全て悪化したのってまさか
ジソン
たぶん、俺達に出会ったことで力が強まっちゃったんだと思う。
○○
……そんな。
お母さんが私を悪魔って言ったのは…やっぱり合ってたんだ
ジェファン
…そんなことない!
ジェファン
あなたちゃんが悪魔だなんて、そんなの絶対にない。
デフィ
そうですよ!むしろヌナは僕達の天使だから。
○○
…ありがとうね
ソンウ
だから、あなたは何も気を落とさなくていいんだよ。魔女でもなんでも、あなたはあなただから。何も変わらないよ。




あとから聞いた話、魔女は人間世界に溶け込んで普通の人間のように生活を送っていたらしい。しかし、ある街に住む魔女が友人を助けるために魔力を使い、その友人から追放された。そこからどんどん魔女の存在が広まり、魔女狩りが始まった。数年前まで身を隠していた魔女も次々と人間の餌食になっていき、忽然と姿を消したそうだ。それが絶滅してしまったのか、どこかに身を隠し続けているかは誰も知らないらしい。

それで、まだ幼く魔力もなかった私は人間世界に引き渡されたみたいだ。私だけでも普通に生きられるように…と。

彼らも私が来た時、それに気づいて家に返さずここに住ませようとしたらしい。もし誰かに魔女だと気づかれたら殺されてしまうから。ほかの種族に狙われてしまうから。


自分が魔女の生き残りだということにショックは感じなかった。
むしろ、彼らと同じだということが。恨まれ続ける人間ではなかったことが、嬉しかった。
何も心配することは無い。そう思うようにした。

でも……私が彼らの本能を引き出してしまうなら、ここにいてもいいのか、なんてまた考えてしまう。辛い思いをさせてしまわないか。
それがすごく心配だった。

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