広間につくと、もうすでにそこにはみんな集まっていて、私はソンウの隣に座らせられた。
ジソンさんはソンウの方を見ながらなにか目で合図する。
みんなだけで話が進んでて、理解してて、私は何もわかってないのに。私が魔女の生き残り?受け継いでる?どういうこと?
現実味が無さすぎて理解ができない。さっきのこともあってグチャグチャしてるのに、こんなこと……
ジソンさんに言われ、一瞬頭の中に昔の記憶がよぎる。
5歳の夏の日、私はたしかにこの街で迷子になった。その時みたあの館……懐かしい感覚。
その瞬間、パズルのピースが揃ったように私の頭の中で過去の記憶が蘇ってきた。
この館に来た時懐かしいと感じたこと、ジソンさんの匂いが懐かしいと感じたこと、ここにいなきゃと感じたこと。
だから。だからそう感じたんだ。
あとから聞いた話、魔女は人間世界に溶け込んで普通の人間のように生活を送っていたらしい。しかし、ある街に住む魔女が友人を助けるために魔力を使い、その友人から追放された。そこからどんどん魔女の存在が広まり、魔女狩りが始まった。数年前まで身を隠していた魔女も次々と人間の餌食になっていき、忽然と姿を消したそうだ。それが絶滅してしまったのか、どこかに身を隠し続けているかは誰も知らないらしい。
それで、まだ幼く魔力もなかった私は人間世界に引き渡されたみたいだ。私だけでも普通に生きられるように…と。
彼らも私が来た時、それに気づいて家に返さずここに住ませようとしたらしい。もし誰かに魔女だと気づかれたら殺されてしまうから。ほかの種族に狙われてしまうから。
自分が魔女の生き残りだということにショックは感じなかった。
むしろ、彼らと同じだということが。恨まれ続ける人間ではなかったことが、嬉しかった。
何も心配することは無い。そう思うようにした。
でも……私が彼らの本能を引き出してしまうなら、ここにいてもいいのか、なんてまた考えてしまう。辛い思いをさせてしまわないか。
それがすごく心配だった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!