第2話

1)"行ってきます" を言う理由
28
2024/04/27 12:00









ガチャッ


あなた
行ってきます、、、











まだ、辺りは静かで薄暗い朝。










俺は、ムダにおおきな家に向かって、




返ってくるはずのない “いってきます” を




毎日言っている












自室にこもっている母さんと、





死んだ父さんに向けて。














父さんは俺を庇って死んだ……














あれは、俺がまだ、中学2年で暑い夏の日だった。










俺は、近所の公園でセミの鳴き声と青々と茂った木に








囲まれながら、父さんとバレーのトス練習をしていた。








休憩をしている時、突然、どこからか大きな声が聞こえた。








俺も父さんも大事に捉えず、








休憩を終えてトスの練習を再開した。













でも、その判断が間違っていた。








あの声は悲鳴だった。










トスの練習をしている時、










背後から少しづつ息を荒くした人が









俺に近づいてきた。










刃物を持った男の人だった。










その人は、刃物を俺に向けて、走ってきて、








刺されそうになったところを








父さんが庇ったんだ。













刺さった場所が悪かった。








周りにはどんどん血が溢れ流れて、








意識が朦朧としている中、








つなぎつなぎで、







俺に言葉を遺して、








父さんは死んだ。























父さんと母さんはとっても仲が良かった。












だから、母さんは父さんが死んだ時、








一日中泣いていた。









俺を庇って父さんが死んだことを知ると、












今まで、優しかった母さんは変わった。











俺を責め続けた。











毎日、毎日、、、













苦しくても、辛くても、










弱音を吐いたら、










誰かに打ち明けたら、











俺が楽になることは許されない。













母さんに責められても、













仕方がない。

















だって、俺のせいで父さんは死んだから。














これは当然の報いだ。



















俺が母さんの最愛の人を奪ったんだ……















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