第20話

第136話
358
2024/04/06 14:01


ないこside








〜数年前〜





……!







階段の音と共に近づいてくるあの声






…ないこ!





バタンッ!と激しく部屋の扉が開いた









ないこの父親
何してんだよ
ないこ
…勉強
ないこの父親
チッ、呑気に勉強しやがって
ないこの父親
自分のした事わかってんのか?
ないこの父親
大体お前のせいで…




高校3年生、いわゆる大学受験生になった頃、父親は俺の部屋にやってきて俺を罵倒する


という毎日が続いていた





ないこの母親
いい加減にして!





そしてそれを母親が毎回止めに来る





ないこの母親
何回も言わせないでよ!
ないこの父親
は?こうなったのはコイツのせいだろ!!
ないこ
2人とも…
ないこの父親
喋んじゃねーよクソガキが!
ないこの父親
だから嫌いなんだよ




ある程度罵倒すると父親は部屋から出ていく



これもいつものパターン




ないこの母親
…邪魔してごめんね
ないこ
…うん
ないこの母親
…これあげる、絶対お父さんを部屋に入れちゃだめよ





そう言って母親はドアのストッパーを俺に手渡した



父さんが俺の部屋に入ってこないようにする為の対策だった



でも効果はなくて、悪化していく日々が続いた






そんなある日に事件は起こった







ないこの父親
おいないこ!開けろッ!!




いつものようにドアを激しく叩く音がした




ないこの父親
今日も引きこもってるつもりか!




ドンドンドンドンドンドンドンドンドン!!




ないこの母親
いい加減にして!!
ないこの母親
こんなことする必要ないでしょ!!
ないこの父親
うるせえ!!
ないこの母親
キャッ!




バタンッ!



母さんの声と共に、何かが激しく壁にぶつかった音がした



気づけばストッパーを外してドアを開けていた



予想通り、壁にぶつかっていたのは母さんだった



父さんが壁に突き飛ばしたってことはすぐに分かった



ないこの父親
やっと出てきたなッ!




ドンッ!!



ないこ
い゛だッ!



父さんに突き飛ばされるように体を押されたせいで、部屋のどこかで右腕をぶつけてしまった




ないこの母親
もう止めてよッ!
ないこの母親
子どもに手出して恥ずかしくないの!?
ないこの父親
うるせえな!コイツを庇うお前がどうかしてるだろ!!




その後どれくらい両親の言い争いが続いたのかハッキリとは覚えてない


でも、今までとは比べ物にならないくらい酷い言い争いで、俺は不安と恐怖でその場から動くことが出来なかった







その翌日、両親は離婚して、俺は母さんと家を出ることになった



電車に乗っている時にした母さんとの会話はさほど重要じゃなかったけど記憶に残っている





ないこの母親
これから生活が厳しくなると思うけど
ないこの母親
ないこのためだから、分かってちょうだい
ないこ
うん
ないこの母親
それと…その痣、大丈夫?
ないこ
うん…大したことない
ないこの母親
そう…





ないこ
…ごめん
ないこの母親
…有輝のことはしばらく忘れなさい
ないこの母親
今は自分の将来のことを考えなさい、分かった?




妹のことに深く触れなかったのは、きっと母さんなりの優しさだったんだろうなと思う





この後俺は大学受験に合格して、母さんの元を離れて東京で一人暮らしすることになった




ないこの母親
じゃあね、ないこ
ないこの母親
何かあったら連絡して
ないこ
うん…ありがとう




それ以来、母さんとはたまに連絡をとる程度で直接会うことはなかった



上京してからは上場企業で働いて、その後は歌い手グループを組んで活動していた






おかげで俺の人生は好転した































はずだった





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