ないこside
〜数年前〜
階段の音と共に近づいてくるあの声
バタンッ!と激しく部屋の扉が開いた
高校3年生、いわゆる大学受験生になった頃、父親は俺の部屋にやってきて俺を罵倒する
という毎日が続いていた
そしてそれを母親が毎回止めに来る
ある程度罵倒すると父親は部屋から出ていく
これもいつものパターン
そう言って母親はドアのストッパーを俺に手渡した
父さんが俺の部屋に入ってこないようにする為の対策だった
でも効果はなくて、悪化していく日々が続いた
そんなある日に事件は起こった
いつものようにドアを激しく叩く音がした
ドンドンドンドンドンドンドンドンドン!!
バタンッ!
母さんの声と共に、何かが激しく壁にぶつかった音がした
気づけばストッパーを外してドアを開けていた
予想通り、壁にぶつかっていたのは母さんだった
父さんが壁に突き飛ばしたってことはすぐに分かった
ドンッ!!
父さんに突き飛ばされるように体を押されたせいで、部屋のどこかで右腕をぶつけてしまった
その後どれくらい両親の言い争いが続いたのかハッキリとは覚えてない
でも、今までとは比べ物にならないくらい酷い言い争いで、俺は不安と恐怖でその場から動くことが出来なかった
その翌日、両親は離婚して、俺は母さんと家を出ることになった
電車に乗っている時にした母さんとの会話はさほど重要じゃなかったけど記憶に残っている
妹のことに深く触れなかったのは、きっと母さんなりの優しさだったんだろうなと思う
この後俺は大学受験に合格して、母さんの元を離れて東京で一人暮らしすることになった
それ以来、母さんとはたまに連絡をとる程度で直接会うことはなかった
上京してからは上場企業で働いて、その後は歌い手グループを組んで活動していた
おかげで俺の人生は好転した
はずだった
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。